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□勝己(MHA)6
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日曜日…おでかけ…爆豪くんと二人で…

午後の授業中、先生の声を遠くに聞きながら頭の中は日曜日のことで頭が一杯だ。
あ、どうしよう何を着ればいいのかな?そんなお洒落な服なんて持ってないぞ私…帰りに雑誌でも買っていこう
というか、これってデートなのかな…?付き合ってもないのにデートしてもいいのかな?私、爆豪くんのことどう思ってるんだろう

怖い人→優しい人?→やっぱり怖い人→だけど、落ち着く

そんな感情の動きがあったけど、彼と私が釣り合わないことを前提に生きていたので好きとか嫌いとか付き合うとか付き合わないとか、付き合うということを想定しようとは思ったことがなかった。
例えば100人に爆豪くんと恋人になりたいかと聞けば80人くらい(残りは言わずもがな、彼が怖くて無理な人種だ)はイエスと答えるであろう人物と私が付き合う…?恋人同士?

「無理だ…」

無理に決まってる。本当にどうして爆豪くんはよりにもよって私だったんだろう

「おいこらバカ名無しさん!」

「ひっ!?」

頭を抱えている間にホームルームも終わっていたらしく、大きな声に意識を戻されたかと思えばいつも通り私を迎えに来た爆豪くんが目の前に立っていた。

「なぁに考え事してんだよ。帰んぞ。」

くしゃっと頭を撫でられたついでに手が捕まってそのまま教室を出ることになる。
相変わらず一緒に動く私たちに次第に視線が集まることは少なくなっていた

「ば、爆豪くん私本屋さんに寄りたいから先に…」

「帰るわけねぇだろうが。っざけんな」

即座に答えられて睨まれてしまえばなにも言えなくなる臆病な私。それと同時に当たり前のようにそばにいてくれる彼にむずむずと嬉しい気持ちも込み上げてきて頭の中はぐちゃぐちゃだ。
悔しくて、少しだけ握られた手に力をこめてみるとびくりと肩を跳ねさせたあとにふふんと鼻を鳴らして満足げな爆豪くんが見えた

本屋さんについて、爆豪くんは参考書を見に行くと言うのでそのまま一旦別れた。
雑誌コーナーに向かう途中見つけた小説の新刊を一冊手に取り、目的地に到着した。

「種類が多すぎる…」

どれが私の雑誌だ。返事をしてくれ。と問いかけたいほどにたくさんの雑誌、雑誌、雑誌。年齢的にはこのへんだろうなってところまでは絞り込んだけどなんだかしっくりこない。

「あ…これだ」

まさしく、今私が求めている本があった。少し買うのが恥ずかしいけれど背に腹は代えられない。意を決して一冊手に取り振り返った瞬間なんだか硬いものにぶつかってしまい、それが人だと気づいてすぐに謝ってみるけれど反応がない。不審に思って顔をあげるとわりと真っ赤な顔をした爆豪くんがいた

「ば、爆豪くん…?ごめんね、ぶつかっちゃったみたい」

「……それ、買うんか」

「え?買うよ…っ!?」

今自分の手にあるものを思い出して本を遥か彼方にぶん投げしまいたい衝動に駆られながらもぐっと耐える。彼が手の甲で真っ赤な顔を隠しながらじっと見つめてくることには耐えられそうにもないのでレジに逃げることにする。即座にそう決めて行動に移すまでそう長くはなかった。

「クソ可愛すぎんだろふざけんな…なんだよ初デート完全攻略って」

火気厳禁の店内で照れ隠しのために彼の手が小さな爆発を繰り返していたことは知らない


*


「お、お待たせしました…」

熱くなる頬を隠すことも諦めて出入口で待つ爆豪くんの元へ駆け寄ると彼もまた真っ赤な顔をしていてビックリした

「……チッ、帰んぞ。」

ぎゅむっと右手を捕まれて帰路を歩く。
てくてく、さくさく、足音が住宅街に響いている。爆豪くんは特別話好きという訳でもなく、私もそれは言わずもがなで。
沈黙はいつものことでなんだか慣れてしまった。ただただ足音と彼の体温だけが私に爆豪くんという存在を思い知らせる。

「あ、の…爆豪くん」

「…ん」

「あの、ね、日曜日のことなんだけど」

無言だけれど止める声はないので続けていいのだと判断する。

「どんな…服が、好きかなぁ、なんて…」

だってあの爆豪くんだ。あの、爆豪くんの隣を歩くことになるんだもの。多少は気を使いたい。

「ば、爆豪くん…?」

無言ですたすた歩き続ける彼に私の声は届かなかっただろうか?不安になって何度も呼ぶけれど返事はない。

「ば…」

「聞こえてる」

「っ、ご、ご…」

「謝んな」

「うっ…」

「俺は」

遮るように言葉を重ねるのは彼にしては実は珍しい。愚図な私の言葉をいつも待っていてくれるのに

「…お前が着るならなんでもいい。お前が俺のこと少しでも意識してくれてんなら正直むちゃくちゃ嬉しい。つーかなんだよあの本ふざけんなよデートって思ってんか。あんま可愛いことしてっと我慢してやんねぇぞ。以上!!!!!」

急に畳み掛けるように話たかと思えば私の家は目の前にあって、まるで捨て台詞かのようにそのまま爆豪くんは走り去っていった。

「な、なんだったんだろう…」

呆然と取り残される私が玄関前に立ち尽くしているのを母が回収するまでには10分はかかった。

*
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