Vitamin

□ss1
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いつだって彼のほうが優勢で
いつだって彼は自信に満ち溢れていて

いつも私は捨てられる恐怖と戦っている

「なぁ、最近お前様子変じゃないか?」
「えっ!?普通だよ…?」

怪訝そうな様子でこちらを見つめる玲央くん。ああ、こんなにすぐにバレるとは…

「変。絶対変だ。お前が一真と一緒にいないなんてジャンがバンジージャンプするくらい変だ。」
「ペギーッ!!!」

さ、寒い。寒いよ玲央くん…意味がわからないし。
「ふっ今日の俺のギャグはクールだぜ」って機嫌よく言っている玲央くんはこの際置いておく。
それよりも私の中で今考えなきゃいけないことがある。玲央くんに気づかれるってことはつまり、彼にだってお見通しだろうってことだ。

「なぁ、一真と喧嘩でもしたのか?ついにあの鬼畜Sに耐え切れなくなったのか?」
「一真くんは優しいよ!!!」
「お、おう…そうだったな…?」
間髪入れず突っ込む私に少したじろぎながらも、向かい側のソファに腰かけてくれたってことは話を聞く気だということだろう。

「で、なんでそんな優しーい一真くんのことを最近避けてるんだよ。言っておくが、お前の行動はバレバレだからな。」

からかう様な口調だけど、真剣に相談に乗ってくれようとしている玲央くんはやっぱりいい人だ。一真くんの幼馴染でもある彼ならば他の方法を考え出してくれるだろうか…

「実は…こないだ瑛太くんに…」

正面から「げ…瑛太かよ」って嫌そうな声が聞こえてきたが、気にせず話を進めていく。
「お前いつもそんな自信なさげにしててなんで一真の横にいんのって…ふふっ、自分でも言われてすごくしっくりきたというか…なんというか…私、一真くんに釣り合ってないなあって実感しちゃったんだよね」
今まで彼が私を好きだと言ってくれて、私と並んでくれて、それで安心してしまっていた。自分は何の努力もしないで彼の横に立とうとしていた。

「んー?別にいいんじゃねえ?つーか、あいつと付き合える奴なんてお前くらいだと思うけどな」

「ううん、一真くんには私なんかよりももっと美人で素敵な女性がいいはずなの。だから…私…」

言葉がうまく出てこない。でも、必死に伝えようとしてみる。一真くんには言えない悩み

「もっと自分に自信を持てるようになれるまで一真くん断ちをしようかなって!!!」

「どうしてそうなるんだよ…」

こちらを見てくる玲央くんは心底あきれているという体で。でも私は本気です。

「だって、一真くんと一緒にいたら自分の直さなきゃいけないところとか、そういうところを見つめなおせないの…一真くんと一緒に入れるってだけで胸の中がきゅうって締め付けられるけど、同時にすごく満たされて…その現状に満足しちゃうか、ら…っ!?」

俯いていた顔をがっと上げてみて見えたのはにやけた玲央くんと

「ほぉ・・・?俺を避けようとはいい度胸だな?」

黒い微笑みを湛えた彼

「え、あ・・・ち、ちがっ」
反論なんか聞くつもりもないかのようにこちらの方に迫ってくる一真くんに慌てふためく私。
「ごめ、な…さ」
「ギルティ!言い訳など聞きたくもない。どうやらお前が俺を避けたことは事実のようだからな。名無しさん、お仕置きが必要か…?」

「今なら謝れば許してやるぞ?そして一生俺から離れないと誓え。どうする…名無しさん?」

壁に両手をついて逃げ道がなくなったと思えば今度は近かった距離をさらに急に詰めてきて耳元に悪魔の甘い囁き声。この視線に、この声に逆らえないことを知っていて、ずるいよ…一真くんは本当にずるい。

「…離れる、だなんて考えたこともないよ。でも一真くんはかっこよくって優しくて…だから少しでも一真くんにふさわしい人間になりたいって思うんだもん…ダメかな?」

「ギルティ。答えになってないぞ、許さん。俺にふさわしい?この魔王子の恋人に相応しい人間など、いない。」

「えっ?」

思ってもない答えに言葉が詰まると同時に涙が止まらない。いないって言い切るだなんて…なぁんだ、私なんてやっぱりもとから土俵にもあがれてなかったんじゃないか。

「俺が選んだ奴が、俺の恋人だ。ふさわしいとかふさわしくないとか、そんなことはどうでもいい」

抱きしめる腕の力はいつもよりも強くて。小さいけど確かに聞こえるのは「心配させるな、バカ」ってやさしい響きで


一真くん、大好き








俺の存在感は・・・?
ペギペギー!!!


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