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□RKRN(六年生)5
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具合が悪いときってどうして突然目が覚めるのだろうか
善法寺さんの忠告通り、熱が上がったらしい私の意識は急激に浮上して身体は重たくて動くことも億劫だけれど心臓だけは元気よくばくばくいっている。黙ってくれ私の心臓
朦朧としている意識の中、身体の自由もあまりきかないのに涙腺だけはゆるんでしまって涙が止まらない。発熱による涙と自分への情けなさだとか、夜中は負の感情がぐるぐると徘徊し始めるから良くない。
「…ん、名無しさん…?どうした?」
「あぁやっぱり熱が上がっちゃったみたいだね」
「伊作、なんとか出来ないのか?苦しそうだぞ」
「うーん…時間も十分あいたしもう一回解熱剤を飲ませようか」
鼻をすすってしまったせいか、隣で座りながら寝ていた寝ぼけ眼な七松さんを起こしてしまったみたいだ。
彼の声に反応したのは私ではなくさすが主治医と言ったところかまだ起きてらっしゃった様子の善法寺さん。衝立の向こうから顔を覗かせてそのまま薬を用意するためにひっこんでしまった
「名無しさん、寒いのか?」
寒気を感じて震える身体を見て心配そうにこちらを見る七松さん。あぁ、そんな表情をさせたいわけではないのに。薄い布団を更に上に被せてもらってもなお寒気はおさまらない。吐き気がないのが唯一の救いか。
できたよ、と優しい表情の善法寺さんの作ってくれた薬はこれまた不味そうな色をしていて出来れば飲みたくないなどと考えてしまうほどで
「小平太、名無しさんちゃんの頭を起こしてあげてくれるかい?」
「こうか?名無しさん、口開けろ…」
そぉっと頭を下から支えられて首に角度がつく。手が上がらないなぁ…どうやって飲もうかなぁなんて考えてたら七松さんからの問いかけに反応が遅れてしまった。
口を動かすことすらできないと判断されてしまったのか七松さんのごつごつとした大きな手が顎にかかってこれまたそぉっと優しくくいっと押される。
「よしよし、そのままだよー」
ん?待ってください善法寺さん?そのままってなに?
考えをまとめようとしていた途中で口の中に広がる苦い味。やっぱり薬は好きになれそうにない。
「ちゃんと飲めたか?…伊作!この薬苦すぎるぞ!」
「良薬口に苦しだよ。というか、小平太は距離が近すぎる。どうして今味見って言って名無しさんちゃんの口を舐めるの?おかしいでしょ?」
ななななななまつさんなんてことを…!?
混乱する頭の中で見えたのは苦い薬を舐めて眉間にシワを寄せる七松さんと、それを諫める善法寺さん。
こんなこと異性にされるのは初めてだ。せっかく解熱剤を頂いても顔の熱を下げられる気がしない…
「名無しさん、ゆっくり休め。」
私がついてるからな!なんて頼もしいことを言ってくださるから胸がきゅんとしてしまうのは仕方のないことだと思う。