黒バス

□大切な、
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「名無しさんちゃん、名無しさんちゃん。なんで真ちゃんてこんなにめんどくせーの!?」

「…へ?緑間くんはすごく優しいですよ。」

一緒に歩くときは速度合わせてくれたり、人混みでは顔を赤くしながらはぐれては大変なのだよ。って言いながら手を繋いでくれる。たまぁに私が体調不良だったり寝不足だったりする時にはいつも以上に優しく、甘やかしてくれるし…

「あぁー!!!もう!!!ノロケはいらないってば。と・に・か・く、俺が言いたいことは…なんで今日は朝からチャリアカーこがされてんのって話!!!」

「うるさいのだよ高尾。今日のラッキーアイテムはチャリアカーなのだから仕方がないだろう」

「そうだったの?緑間くん、おは朝ってすごいね…チャリアカーだなんて…」

「そうなのだよ。何を言われるか全く予測がつかないところが面白いのだよ。」

「だーかーらぁぁあ!!!なんで俺が漕いでんの!?真ちゃんが漕いで名無しさんちゃんがリアカー乗ればいいじゃん!!!」

うがああああっと叫ぶ高尾くんを見ていると申し訳ない気持ちが大きくなってくる。
そう、今私と緑間くんはリヤカーに乗ってます
高尾くんが引っ張ってくれているリヤカーに

「嫌なのだよ。前と後ろに別れてしまったら、名無しさんと会話しづらいではないか…そんなことにも気付かんのか、高尾は」

じとーっと高尾くんを見つめる瞳は冷たくて、でもそれにも怯まずに反論する高尾くん。仲が良いなぁ〜…
今更ながらに緑間くんがいった台詞を反芻してみると、少し照れてしまう。彼も、私と会話したいと思ってくれていたのだ嬉しいに決まってる。

「名無しさん、何で顔を赤くしているのだ?」

高尾くんとの戦い(?)が終わり、緑間くんがほんの少し意地悪な顔をしてこちらを覗きこんできた。うぅ…この顔は危ない
何も考えてないよ?ってかわそうとしてみても緑間くんはじっとこちらを見続けている。ニヤニヤという効果音でも付きそうな勢いだ





「何を考えていたのか、早く言うのだよ。言うまでこの体制のままにするぞ」

ひょいと体を抱き寄せられて気づけば彼の腕の中
ただでさえ広くはないリヤカー内で、密着する肌。夏服なのを少しだけ恨んだ…肌と肌が触れることがなんだか恥ずかしい

「あーあーちょっと、俺もいるんですけどー。何その甘い雰囲気!!!もう学校着くかんなっ!!!」

「っち、邪魔が入ったのだよ…」

「じ、邪魔って…」

緑間くん…と言いながら乾いた笑いをこぼす私を見て、嬉しそうにこちらを見て止めの一言

「帰りは、ゆっくり帰るのだよ。待っていてくれるか?」

「うん。でも、緑間くんいつも大丈夫…?練習後で疲れてるのに、私を送ってくれて…」

緑間くんとずっと一緒にいたい。クラスも違う、部活も違う、となると同じ学校でも会える時間は限られてくる。だから登下校の時間はとても幸せなんだけど…緑間くんが無理していないか、とても心配で

「そんなやわな体ではないのだよ。それに、名無しさんに会えるのなら疲れなんて吹き飛ぶのだから。」

「み、どりまくっ…わわわ、ちょっとこっち見ないでいただけると有難い、です。ちょっと今…あれであれだから…」

はいはーいとうちゃーくっとぉ。の高尾くんの声で動きが止まる。助かった…

「高尾君、ごめんね。ありがとうございました…」

朝から汗をかいてしまっている高尾君にハンカチを渡しながらお礼と謝罪を

「うぅっ…名無しさんちゃん、めっちゃいい子だなーさすが真ちゃんの彼女になるだけあるよ、うん…真ちゃんの我儘に徹底的に対応できるの、名無しさんちゃんくらいだもんな。サンキュ!!」

へへっと笑顔を見せながら言う高尾君はとても可愛い。緑間くんがかっこいい系なら、どちらかというと高尾君は可愛い系だ。もちろん、男の子っぽい方の意味でだけども

「高尾、今すぐそのハンカチを寄越すのだよ」

「ちょ、ま、…待った、タンマ真ちゃん。その凶器という名のボールを手から離して下さいお願いします。その離れた距離からのシュートぜってー痛いから!!!!」

ワイワイ騒いでる二人を見ているとこちらが幸せな気分になるのだ





「名無しさん、帰るのだよ」

放課後、部活はお休みだけれど彼を待つために図書室で本を読んでいたら、ひょこっと図書室に現れた緑間くんはいつも通り大きなスポーツバッグを肩にかけてすぐにでも帰れる様子だった

「…?今日はずいぶん早かったね?何かあった…?」

「あぁ、左指の爪が欠けてしまったのだよ。こんな時に変な癖がついては困るから、今日は途中で帰ることにした」

えぇ!?という声を漏らすか漏らさないか、の速さで私は緑間くんに駆け寄った。だって、彼がどれほど普段自分の指を大切にしているか、バスケットのために手入れしているか知っているから

「み、緑間くんっ!!!どこっ?どの指…!?テーピングはもうした?あ、でも…私がさわって悪化したら困るもんね…ごめんね…」

そうだ。私がヘタに手を出して今悪化させては本末転倒。我慢…我慢…何もできない自分が歯がゆい、悔しい

「名無しさん、名無しさん、落ち着くのだよ。中指の爪がほんの少し欠けただけなのだから。…ありがとう」

あわてる私を宥める緑間くんがとっても優しい顔をするものだから、困る。と同時にやっぱりなにかできることは…と考えてしまう

「私、鞄持ちたいな。せめてこれだけでも…」

「なにを言ってるんだ全く…こんなに重たいものを名無しさんに持たせた方が落ち着かなくて怪我してしまいそうなのだよ…」

「むー…だって、緑間くんの役に立ちたいよ。いつも私ばかりたくさんしてもらってばかりなんだもの…」

「じゃあ、これでいいのだよ」


そう言って彼は私の手を取った


緑間くんっ、左手…大事にして?大切でしょう?せめて右手で繋ぎたい、です。

大切な左手で、大切な名無しさんの手をとって何が悪いというのだよ。それに、名無しさんの手があった方が治りが早くなるのだから。

え?

「手当て」というだろう?まぁ、俺としてはこっちの方が嬉しいのだが

手を引きよせてその指にキスを一つ




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