黒バス

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紫の彼のことを思い出しつつ、日々の仕事をこなす。遠いなあと思っていた日曜日は当日を迎えてみるとなんだかあっという間だった気がする。
つい一週間前に出会ったばかりだというのに彼のどこがこんなにも私を惹き付けてるのか皆目見当もつかない。けれど、たしかに私は彼のことが好き、だと思う。名前も歳も知らない上に年下の男の子に恋をするだなんてバカげているし高望みしすぎだと自分でもわかってはいる。
誘われた(?)ことが不覚にも嬉しくてついのこのことやってきてしまったけれどここのケーキ屋さんは初めて来る。店内は程よい静けさでとても落ち着く雰囲気だ。

「ご注文はお決まりですか?」

「あ、と…ガトーショコラと季節のタルトを…」

店内でお召し上がりですかと問われ、カフェスペースがあることにやっと気づいた。折角なのでそのまま食べることにして席を探していると見覚えのある紫。

「あ、おねーさんこっち。」

「あ、いた…」

おねーさんほんとに来たね〜少しは人、疑った方がいいんじゃない?なんてあきれ顔で言われながら彼の向かいに座る。

「悪い人には、見えなかったから」

むしろ好意を抱いていますだなんて恐れ多いことは言えずに苦笑しながら返すとまたもやふぅんと短い返事で返される。

「俺の事良い人だなんて言う人いねーし…。でもおねーさんが来てくれて良かった〜ここ、カップルにしか出してくんねーパフェあんだけど一回食べてみたかったんだよね〜」

「カッ!?…っ、そ、それで、お礼はこれってことですか?」

思わずココアを吹き出しそうになったのをなんとか抑えて気になっていたことを聞くとニコニコしながら「うん」とこれまた短い返事を返された。
ほどなくパフェと私が先ほど注文したケーキがテーブルに届けられた。けど…

「大きいねえ…」

「これ二人で食べる用だからね〜」

俺は一人で食べるけどって幸せそうにしている彼はとても可愛くて、もう…こんなにハマるならこなきゃよかったかもしれない…。
そう思いながらも口に運んだケーキはとても美味しくて思わず頬が緩む

「美味しい…!」

零れた本心に彼は軽く目を見開いたけれどすぐにここの美味いよねってふわりと微笑みが返ってきた。

「ねー、そういえば名前教えてよ」

ついでにアドレスもって通信を求めるかのように手元でフリフリとスマホを差し出されなんだか夢を見ている気分。

「むらさきばら、あつし?」

「うん。名無しさんちん、よろしくね。」

思わず呼ばれた名前に頬がかぁっと熱くなる。「あり?顔赤い〜?」なんて距離を詰められるともう心臓が爆発してしまいそう。

「え、あ…ちょ、紫原くん、近…」

「名無しさんちんめちゃくちゃ美味そうに食べるしなんか可愛いかも…」

「え、」

「俺、名無しさんちんのこと好きかも」

「は、」

「また一緒に来ようね〜」

とっくにキャパオーバーの私は置いてけぼりで話を進める彼はとても楽しそうでした。




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