たからものささげもの他
□好きなものたくさん
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「…どうしてもダメ?」
「うん。だーめ。」
ほっぺた膨らませたってダメ、これだけは名無しさんちん相手でも絶対譲れない
「っでも、」
「ダメなものはダーメー。無理だし」
あ、ヤバい泣いちゃいそう。んー…でもこればっかりは、無理。どうしようかな、泣き顔は見たくないんだよねやっぱり…なんて思う自分もいるけど何度考えても答えなんて一緒で
「なぁ、敦。なんでそんなに反対するんだい…?」
「っ氷室先輩…!!」
ちょっと、待った。何それ何その顔。あー室ちんひねりつぶしたい。
室ちんを発見したとたんに救世主を見るような顔で俺の横を通り過ぎて逃げようとした名無しさんを捕獲することは容易なことで、こんな時に役立つんだな…スパン長い腕。
「う、紫原くん、いじわるだ…」
「名無しさんちん、俺の言うこと聞いてよ…ね?」
後ろでワオ、敦がお願い事…?なんて言ってる室ちんのことはひとまず、置いておく。とにかく今はこの目の前にいる我儘な姫をどうにかしなくては…と俺にしては多分、珍しく少しだけ焦ってる。
そんな俺の心を知ってか知らずか必死に腕の中で離して、だとか意地悪、だとか言って睨んでも逆効果だしさー?
「どうして、ダメなの…?理由を教えて?」
あーやっと、理由聞いてくれた。彼女らしくもなく、やりたいの一点張りだったのはやっぱり少し頭ごなしに反対されたことへの対抗だったのだろう。
「ダメなものはダメだよ。マネージャーなんて、名無しさんちんやっちゃダメ。他の男と話すなんて、絶対、ダメ。」
「うぅー…だって、紫原くん…あの、ね、」
そうだ、そもそも急にやりたいなんて言い始めた彼女の言い分も聞いてなかった俺も悪かったのかー。ちょっと反省。名無しさんのお願い事はできる限り聞いてはあげたいし、理由聞いたら他に方法が見つかるかもしれないし。
聞くだけは聞かなきゃ嫌われるのだけはごめんだしね、
「だって、マネージャーさんになって紫原くんの近くにいきたい…こんな理由ダメだって分かってるんだけど、あの、同じ目線に立ちたい、の…」
「天使…。」
「あ、敦?どうしたんだ…?」
「ねえ、室ちん、今の動画とってないの?ねえ…誰か撮ってないー?」
あー…なんで今の撮ってなかったんだろう。あーもー何、可愛すぎる。今、俺きっと顔赤いんだろうな…カッコ悪い
「うん…やっぱり、ごめんなさい…こんな理由じゃ、みんなに失礼だったね。」
なんだか言ってるうちに落ち着いてきたのか、結局は自己完結してしょんぼり落ち込む名無しさんちん。うーん、俺だって名無しさんと過ごす時間が増えるのは嬉しいんだけどね
「いいよ、失礼とかじゃないし。けど、俺は名無しさんが他の男の面倒見るの耐えられない。無理。」
これは本当の本当の本音。絶対無理元から嫌いな練習にさらに身が入らなくなる
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お互い理由を言いつくしたせいか、少しだけ落ち着いてきたのでまた着席してお昼を食べ始める。話し合いがヒートアップしてつい立ちあがっちゃったけど学食にいたんだよねーデザート何食べよう
「名無しさんちーん、何食べる?俺これ食べたい。」
「切り替え早いよな、敦って…」
うーん、どうしようかなこれとこれと…まあいいや食べたいやつ全部頼んで名無しさんちんと分けるし。やっぱり一緒に何か食べてる時すっげ可愛いんだもん。
「あ、紫原くんこんにちわ。ちょっと良いかな?今日の練習内容なんだけど…」
タイミング良くか、悪く、か…食後のデザートを堪能している時に来た男バスマネージャー。あー…名前何だっけな
「見て分かんないの?食事中だし。はい、名無しさんちん、これも食べるっしょ?」
あーん、てやったらこれまた赤くなるのがたまらないね。
「むっ、らさきばら…くん、話、聞かなくちゃダメだよ…?」
「だって、別に室ちんに言えば良いじゃん。練習内容とかマジ、どうでもいいし」
それよりむぐむぐ食べながら喋ってる名無しさんちん見てる方が断然楽しいし。
「女性にそんなこと言っちゃ駄目だよ敦?それに学園のマドンナさんにそんなこと言ったら周りの目が痛いんだけど…ごめんね、俺でよかったら聞くから、いいかな?」
「うん。全く、紫原くんてばいっつもつれないんだから…ありがとう氷室くん。基礎連の時間なんだけどねー」
んーやっぱりここはチョコが一番かな…しょっぱいスナック系も好きだけど…まあ学食のデザートはこういうのが多いもんね。でも甘い物の後には塩味が食べたくなるのもあるわけで
「名無しさんちん、俺ちょっとボテチ買ってくる。待ってる?」
「ん、私まだ御飯食べてる途中だから…待ってるね。」
「すぐ戻ってくるからー」
ダッシュで行ってダッシュで帰って来よう。室ちんと二人になったら嫌だし。でもとりあえずは、さっきの問題も解決したし俺的には一安心。珍しく我儘言ったと思ったらビックリしたし。理由聞いたらまあ…嬉しかったけどね
足早に売店に行き、ガっと手づかみして目当ての物を手に入れる。あ、これ名無しさんちんの好きなお菓子だ。うん、これも買って行こう。
「あのっ!!!む、紫原くん…!!!」
会計を済ませてさあ、戻ろうと振り返った先にはめちゃくちゃ小さい女子。身長は名無しさんちんくらいかなー
。でも抱き心地は断然名無しさんちん。間違いない
「これ、その…作ったんだけど食べてもらえないかな…?」
おずおずとその子の手から出てきたのはなんとも美味しそうなマフィン
「紫原くん、甘いもの好きでしょ…?一生懸命作ってみたの…」
あーそういうこと、か
赤い顔をした、その子を見て納得する。と同時にマフィンにさよならを告げる
「あー無理。そういうのだったらいらない。」
「え…ど、うして…?」
「名無しさんが泣くから。じゃあねー」
好意を向けられてるって最初から分かってるものはいらない。そんなのいらない。例えばそれを受け止めた後に俺が気持ちを返すとかはあり得ないけど、受け止めるだけで名無しさんは不安になるから。何も不安に感じることなんて、ないのにねー。
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「あ、おかえり紫原くん。」
戻ってきて早々にニコニコと出迎えてくれる名無しさんちんを見てるとさ、これでもかってくらいだらしない顔になっちゃうんだー。
ほら、こんなにもこの子に夢中なのに、どうして名無しさんちんは自信を持てないんだろう…それが可愛いと思うと同時にもどかしい。
「ただいまー。ね、これ食べよう?名無しさんちん、これ好きだもんね。」
「あっこれ食べたかったやつだ〜。紫原くんどうして分かったの…?凄いっ」
「俺、名無しさんのことなら何でも分かるし。ねー今度お菓子作って欲しいー作ってー」
お菓子作り得意だもんね、というか名無しさんが作ったものなら多分何でもおいしく感じちゃうだろうけど。
「うんっ、何が良いかな…?うーんクッキー、シュークリーム、マフィン…アップルパイもいいよねー」
ほら、すごく嬉しそう。きらきらしてて可愛いな。こんなにも俺は大好きなのに、もっと、もっと自分のこと好きになってよ
「紫原くん、お菓子あるよ?こっちで彼女さんも一緒に食べない?」
室ちんと話してた女子からの名無しさんちんも一緒にっていうのは珍しい誘い。だけど、
「いらなーい。」
「紫原くん、いいの…?私は気にしないで、行って来てもいいんだよ?」
「んーいい。」
誰にも見せたくないし。この嬉しそうな彼女の顔は。
好きなもの食べながら、俺のことたっくさん考えてるこの顔は俺だけ、の特典でしょ?名無しさんが自信ない分、俺が名無しさんの可愛いところたくさん知ってるからね。
結論:溺愛
今度のおやすみに一緒に色々作る、とかどうかな?
じゃあ、俺が名無しさんちんにケーキ作るー
わぁ、紫原くんのケーキ大好きっ!!私も頑張って作るねっ何が良いかなー…
名無しさんちんが作るものならなんでも美味しいしー。あ、マフィンかな…
マフィン久しぶりだね〜チョコ、クルミ、抹茶、キャラメル…種類たくさん作ろうかな
ほら、食べ損ねた分の愛情は君がくれる。
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