たからものささげもの他

□蘭丸とデート
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ガキじゃあるまいしガラにもなくはやる気持ちを抑えてインターホンを鳴らす。

「……でねぇ」

まぁた寝てんじゃねえだろうな
溜息を一つ落として以前に彼女からもらった合鍵を使って中に入る
物が多くもなく、少なくもない綺麗に整頓されたこいつの部屋は俺にとって数少ない落ち着く場所となっている
一人暮らし相応の広くもないリビングを通り抜けて目指すは彼女の寝室
ベッドサイドのオーディオプレーヤーは寝る前に俺の曲を聞いていた名残が残っているし、枕元にはこないだ受けたインタビュー記事が開いたままで嬉しいと思う反面少し照れくさい気持ちが出てくる

「こら、起きろ名無しさん」

頬をつついてみたって無反応。
幸せそうなこいつの油断しきった顔を見ていたらこっちまで眠くなってくるから困りものだ。
ベッドに寄りかかりながらこないだから作っているラブソングの続きでも作ろうか。俺が近くに来てんのに、しかも曲作ってたのに寝てたって気づいた時は拗ねて大変だろうけど、寝てるお前が悪ィんだからな



***


「んぅっ…」

お、眠り姫のお目覚めか?
ベースを隣に置いてベッドの上の名無しさんの顔を覗き込むとうっすら目が開きかけ。

「よぉ、ねぼすけ」

「は、よ…ござます。」

相変わらず危機感ねーの。恋人とはいえ寝起きに男が目の前にいたらもっと焦ってくれよバカ。

「ん…っ?蘭丸さん、どうしたんですか…?あれ?ここ、どこ?」

「お前ん家に決まってんだろ…悪ィ、チャイム鳴らしても出ねえから合鍵使った」

「わ、合鍵使ってくれたんですね。ありがとうございます」

「普通ここで礼は言わねえだろうが…」

本当にこいつってやつは…何度チェーンかけろっつっても言うこと聞きゃしねえし。不審者だっているんだ、用心しろって脅したって「もしかしたら蘭丸さんが寝てる間に来てくれるかもしれない」って言いやがる。サンタクロースかよ俺は

「蘭丸さん…私、どのくらい寝てました?」

さっきまで喜んでいたくせに急に顔色が変わって今度は焦り始める名無しさんを見て少しだけ加虐心が湧いてくる

「ぐっすり寝てたぜ?俺が二曲作曲し終わるくらいな」

「えぇ!?蘭丸さん作曲してたんですか?うー、起こしてほしかったです…」

じとり恨めしそうな目で見てくる顔もなかなか好きだが今日は俺がもっと好きな顔を見に来たことを思い出した

「ほら、準備しろ。」

きょとんとした顔で見上げてくる名無しさんに少しだけ早いクリスマスプレゼント

「デート」

そう、それだ。その顔だよ見たかったのは。

「はいっ!!三分で支度します!!」



***



「ほんと、飽きないよな」

ある意味呆れるほどだ。
結局デートっつっても行ける場所は限られていて、その中でもこいつがパセリを気にってることは知ってるが毎回毎回ここに来てはおれが作ったオムライスが食べたいとねだるばかり。親父が泣くぞ

「蘭丸くんのオムライスには特別に愛情が入ってるから私のでは勝てないんだね」

「っ、うるせえ。」

否定はする気はないが恥ずかしい事には変わりない。

「蘭丸さんのオムライス、大好きです」

頬を赤らめてまるで告白をするかのように言ってのけるお前は本当に、なんつーか…

「名無しさん、五秒だけ目ェ閉じろ」

言われるがままに目を閉じる名無しさんに短いキスを一つ落としながら

「っ、らんまるさん…!これ、」

「予約だバーカ」

鎖というには少しだけ華奢なものを送ってやろう。



*

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