ハイスクールD×SKL
□第十七話 引き籠もりヴァンパイア
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ギャスパーとの出会いから二日後の放課後、イッセーは朱乃に呼ばれて神社に来ていた。なにやら重要な話があるとかで。
「しっかし、この神社の石段っつうのはどうも苦手だ。なんつうか長いんだよな」
イッセーはブツブツと文句を言いながらも登る。到着するとイッセーはある気配を感じて眉をひそめる。
「お待ちしてましたわ。イッセー君」
そこに現れたのは朱乃。服装は巫女服で元々大和撫子な姿なので見栄映えがよろしい。なにより学園の二大お姉様の一角、普通の男子なら狂喜乱舞してもおかしくない。
だが相手はあのイッセーと真上である。効果は全くないに等しい。
「んで?俺を呼んだのはなんだ?」
「うふふ…会いたい方がいらっしゃいます」
神社内に入るとそこには神々しい人物がいた。見た目はまさに天使で上級クラスを遥かに超えている。
「お待ちしておりました。赤龍帝にして魔神皇帝。いや、兵藤一誠君」
「てめえが呼んだのか。で?この俺に何の用だ?ミカエル」
そう、目の前にいる天使は現天使のトップのミカエルである。
「実は…アナタにお渡ししたいものがありましてね」
ミカエルが手を翳すと空間から剣が出現した。イッセーはその剣の力をすぐさま察した。
「その剣…龍殺しの剣か」
「えぇ。その名もアスカロン。聖ジョージを持っている聖剣です。これをアナタに譲渡します。お受け取りください」
「いらん」
ミカエルからの譲渡にイッセーは一蹴するように拒否した。それをわかっていたのでミカエルはあまり驚かなかったが、敢えて聞く。
「なぜですか?」
「んなもん邪魔になんだけだ。俺には牙斬刀があるしな。真上もいらねえとよ。そいつは木場にでもあげな」
「…そうですね、わかりました。会談が終わったらお渡ししましょう。それでは失礼します」
ミカエルはそういうと去った。イッセーも帰ろうと立ち上がるが、朱乃が引き止める。
「あん?」
「イッセー君。悪いのだけど真上君と変わってくれないかしら?」
「真上と?なんで?」
「お願いします」
「…ま、いいか」
イッセーは真上と変わる。真上は朱乃を見つめる。
「変わったぞ。で、なんだ?話があるのだろ?」
「…真上君。イッセー君も気付いているのでしょうが私はただの眷属悪魔ではないの」
そう言うやいなや朱乃の背から翼が栄える。それも悪魔の翼だけでなく違う翼、堕天使の翼も。
「私は人間と堕天使のハーフ。父が堕天使で母が人間の。私はこの翼が、堕天使の翼が嫌い。だから、私はリアスの眷属悪魔になったわ。悪魔になればこの翼が消えると。けど、現実は悪魔と堕天使の翼を両方持った存在になってしまった。私はもっとも醜い者へと変わってしまった。うふふ…醜いでしょ?こんな私」
「…なにがだ?二つの翼があるからなんだ?それに意味でもあるのか?」
朱乃の独白に真上は何のことだかサッパリと言いたげだった。真上にはあまりにも意味ないことだ。
「だって…私は醜いのよ。悪魔でもなく人間でもなく堕天使でもない。ただの中途半端な醜い者。そんな私を誰が…愛して」
「意味わからん。つかキサマはキサマだ。悪魔だとか堕天使だとか関係ないだろ。キサマは朱乃だろ?」
その言葉に朱乃は涙を流した。それは嬉し涙。朱乃ははっきりと自覚した。自分の心にある思いを。
「…うふふ…ありがとう真上君。ようやく答えを得られましたわ」
朱乃は艶を出しながら頬を赤めながら真上を見つめる。誰もがコロッと落ちそうな姿に純な声を発した。
「真上君…私はアナタのことが好きですわ。今すぐにでもアナタを感じたいですわ」
「…はぁ、正直俺やイッセーに恋するバカはそういないと思ってたんだがな。ほんとにバカがいたとはな。だが…イッセーもこんな気持ちだったか。悪くないな」
真上は朱乃とキスをした。そして…2人は神社内で熱く互いの肉体を感じあった。
そして…とうとうこの日がやってきた。三勢力の会談が。新たな道標となりそして新たな戦いの狼煙が。