創造神の誕生〜vividな外伝〜
□Memory05 2人の主人公の練習試合
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3人称SIDE
『クラウス。今まで本当にありがとう。だけど私は行きます』
『待ってくださいオリヴィエ!勝負はまだ……!』
『あなたはどうか、良き王として国民とともに生きてください。この大地がもう戦で枯れぬよう。青空と綺麗な花をいつでも見られるような…そんな国を』
『待ってください!まだです!!“ゆりかご”には僕が!オリヴィエ!!僕は!!』
そこでアインハルトは眼を覚まします。彼女が見た夢は前世の記憶。覇王【クラウス・G・S・イングヴァルト】の悲しい記憶。彼は聖王【オリヴィエ・セーゲブレヒト】を百合子に乗せるのを阻止できなかった。
それがアインハルトに受け継がれて彼女を苦しめる。
(いつもの夢。一番悲しい覇王(私)の記憶)
だが…こんな夢はただの呪いでしかない。今を生きる彼女にとっては。だが、アインハルトはそれに気付かない。それが宿命だと思っているから…果たしてそれに気付くのはいつ?
朝6時頃、ヴィヴィオはノーヴェと一緒にランニングをしている。あのスパーからヴィヴィオはアインハルトが求めているものになろうと、自分の精一杯の気持ちを伝えようと決意する。
「アインハルトの事、ちゃんと説明しなくて悪かった」
「ううん。ノーヴェにも何か考えがあったんでしょ?」
少しランニングをして小休憩を取りながら、ノーヴェがアインハルトの事を話す。
「あいつさ、お前と同じなんだよ。旧ベルカ王家の王族、覇王イングヴァルトの純血統」
「…………そうなんだ」
「あいつは色々迷ってんだ。自分の血統とか、王としての記憶とか。でもさ、救ってやってくれとかそーゆーんでもねーんだよ。まして聖王や覇王がどうこうとかじゃなくて」
「わかるよ大丈夫。でも、自分の生まれとか何百年前も前の過去の事とな。どんな気持ちですごしてきたのかとか。伝え合うのって難しいから。思いっきりぶつかってみるだけ」
ヴィヴィオができる精一杯…それは戦って伝えう事。ヴィヴィオは結局クローンでしかないため聖王の記憶や苦しみを味わう事はない。
だから、アインハルトの苦しみはわからない。だからこそ、ぶつかりあえしか方法がない。
「仲良くなれたら教会の庭も案内したいし」
「ああ、あそこか…いいかもな。悪いな。お前には迷惑かけてばっかりで」
「迷惑なんかじゃないよ!友達として信頼してくるのも指導者(コーチ)として教え子(わたし)に期待してくれてるのもどっちもすべて嬉しいもん。だから頑張る!」
ヴィヴィオは拳を振るう。アインハルトに伝える為に…創神ヴィヴィオの本当の気持ちを。
その頃、トウヤは自室で精神統一をしている。何故精神統一しているのか自身でもわからない。ただ、トウヤの心の中でなにかが動いたとしか言い様がなかった。
〔珍しいわね。とりあえず扱える位しか考えてなかったアナタがそんな事をするなんてね〕
「…そうだね。僕もわからない。来週、ロクサスさんともう一回戦う。しかも今度はちゃんとした練習試合をすると考えると何故か真面目になってね」
トウヤの言葉にデバイスであるブレイブは?マークをつける。なにがトウヤをここまで駆り立てるのか。それが、ある感情で有名な言葉なのだがトウヤとブレイブは気付かない。
気付くのはおそらく来週のロクサスとの試合でわかるだろう。
ロクサスは珍しく早く起きてブレイクを磨いていた。
〔来週に勝負ですね〕
「ああ」
〔…嬉しそうですね〕
嬉しい…その言葉がロクサスの頭の中で反芻する。だが、何故かそれが不思議と心地よかった。
「嬉しいか…確かにそいかもしれない。しかし何故俺が楽しそうなのかよくわからない」
〔それはマスター自身で見付けるべきです〕
「オレ自身で?ブレイクは分かっているのか?この感情が」
〔はい〕
ブレイクはわかると答えた。ロクサスは考える…自分の中にある感情が何なのか考える。しっかり考える…この思いは何なのか?
少しずつ理解していく。約2分後…ようやく理解した。ロクサスの中にある感情が。
「…そうか。わかったよブレイク。オレの中にあるこの気持ちの問題は…」
そう、ロクサスにありトウヤにもある感情…それは。
「闘争心。そして宿命」
〔左様。彼トウヤ殿もそう思っているだろう。もしかしたらトウヤ殿はマスターのライバルになるであろう〕
トウヤとロクサス…年は違えど2人はライバルに近い関係になっていた。もっとも2人はまだそこまで経ってないし気付くのはまだ…先のはず。