闇夜の友愛 ―第四次忍界大戦―(完)

□狭き子の視野を持つ者の終(しゅう)
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ユラムはそんな骸となったサスケを見て大層に笑い、地に降りて近付く。ユラムはサスケの顔の隣りに立ち、手をサスケの両目に触れる。
そのままユラムはサスケの両目を抉り取った。手は真っ赤に染まり、眼球まで赤い。サスケは目を無くし、眼球のなくなった目の部分は空洞と化していた。

「貴様みたいな恥さらしにこの思考な目は不必要だ。そして…」

ユラムはサスケの両目の眼球を地に落として、片足で両目を踏みつぶした。

「そんな恥さらしの目も不必要だ!クックック…これでうちははこの俺とマダラのみ。木の葉のみならず全ての忍を殺してうちはが世界を支配する!ハッハッハッ…ハーッハッハッハッ!!!」

ユラムは高笑いをしながらサスケの死体から背を向けて去ろうとした。だが…その時、骸となったサスケの体がなんと宙に浮かんでいった。

「なっ!?」

ユラムはなにが起こっているのかさっぱり分からず、ただ見てるだけしかできなかった。すると、サスケが変貌を遂げていく。
サスケの体は有り得ぬ方向に曲がっていき、どんどん円くなっていく。そしてサスケは白くなり大きな球体へと変わった。
それは…目玉だ!しかも写輪眼の目玉。ユラムは愕然とし…ただただ呆然とするしかなかった。

「な…なんだこれは……」

ユラムはそう呟いた。大きな写輪眼の目玉は、ユラムをジッと見つめ見下ろす。

「!!?」

その時、ユラムの足元つまり地面からなにかが出てきた。それは手だ。それも沢山の。それと同時にユラムは顔を上げ、上空を見上げると空は真っ暗になっていた。
ユラムの頭の中はパニックになっていた。だが、ユラムには冷静になる時間も暇もなかった。手が腕が沢山出てきて、今度は人が沢山地面から出てきた。

「ヒッ!」

「この愚か者…」
「裏切り者…」
「恥さらし…」
「救えぬ者…」

それは…死んだうちは一族の者達だ。うちは一族の者達はユラムを罵倒しながらユラムを掴み引きずり飲み込もうとする。
ユラムは恐怖で動けなくなり、ただ沢山の手の波に飲まれていく。

(な、なぜだ!?なぜ俺を認めない!そんな筈はない!俺はうちは一族を理解している!誰よりも何よりも!なのに…なんでその俺を否定するんだぁ!!)

ユラムの頭の中は完全に混乱と恐怖で一杯になり、怯えて涙を流す。そんな波の中からあの大きな写輪眼がユラムの前に現れる。
その写輪眼の中心から何かが出てくる。

「言っただろ…お前が…」
それは上半身だけが出てきた。それは…さっき殺したはずのサスケだった。サスケは腕をダランと下げ、顔を俯かせている。
サスケはゆっくりと顔を上げていく。それと同時に大きな写輪眼が万華鏡写輪眼に変わっていく。サスケが顔を上げると潰したはずのサスケの両目が万華鏡写輪眼に変わっていた。

「お前が“うちは”を語るなと!」

「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

その瞬間、ユラムは悲鳴を上げた。








「……ハッ!」

ユラムはカッと目を見開いてその場で倒れこむ。そこはさっきまでの地面ではなかった。そう…サスケとユラムが最初に立ち会い睨み合った木の枝の上だった。

「い、今のは…まさか…」

ユラムは荒い息を吐きながら顔を上げて前を向く。そこにはさっき殺したはずのサスケが無傷で無表情で仁王立ちをしていた。
その時、ユラムはようやく気付いた。

「まさか……いままでの出来事は…」

「…幻術だ」

ユラムの呟きにサスケは幻術だと答えた。そう…さっきまでの出来事は、サスケの死は、あの大きな写輪眼は全て幻術だったのだ。
ユラムは驚愕以外何もなかった。ユラムの頭の中は混乱でいっぱいだった。

「いつ…いつ幻術にかけた!!?」

「それを教えると思うかバカが。貴様、自分で言ったよな。真なるうちはだと。だったらいつ出したか看破してみせろ」

ユラムはサスケにいつ幻術にかけたのかと吠えながら問う。サスケは突き放すように小バカにしながら答えない。
いつサスケが幻術をかけたのか?それは最初に対峙した時、サスケが「“うちは”を語るな」と言った瞬間にユラムに殺気を放つと同時に月読をかけていたのだ。
あまりにも自然な幻術のかけ方にユラムは全く気付かなかったのだ。なによりユラムがサスケの幻術にまんまと引っ掛かったのが証拠である。
一つだけ言っておこう。サスケは幻術はそれほど得意ではない。兄のイタチには劣るし、サスケ自身、あんまり幻術を使わない。
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