創造神の誕生(後) ―StS〜ネギま―

□ネギま編 第55話 アリカ救出
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クルトSIDE



アリカ様が捕まった。理由はオスティアを危険に晒したからだと。そんなの子どもの僕にもわかる。これは陰謀だと。
けど世間はアリカ様が首謀者と認められている。信じてないのはオスティア出身の人達だけ。僕は紅き翼が颯爽とアリカ様を救出するのだと思っていた。
けど…ナギさん達は何もしない。ただただ紛争地帯に行って負傷者を救うばかり。なんで?どうして?どうしてアリカ様を助けないのですか!
僕はナギさんに問い激昂した。だけど返ってきた回答は言葉を濁すばかり。僕はいたたまれなくなり1人になりたくて皆さんと離れた。
もうあの人達にはたよれない。こうなったら…僕が!

「どこへ行く気だ?」

そこにリョウさんが声を掛けてきた。リョウさん…アナタもアナタです!どうして…!?

「アリカを救出にか」

「そうです!アナタ達が何もしないから僕が!」

「やめろ。お前だけでは無理だ。よしんば救出できてもそれはアリカの立場どころかお前自身も悪くなるぞ」

そんなの関係ないです!アリカ様を助けるためなら!

「話を聞いてたか?お前はアリカを苦しめたいのか?」

「え?」

「いいか?今、アリカは罪人だ。なにより現状は悪い。救出したら、俺達の立場が悪くなるのはまだ構わない。だが…それと同時にオスティアの住人達に危険が及ぶ。そうなったらアリカの立場は悪くなり、最悪誰からも敵対される。さらに言えばアリカの心が壊れてしまう」

そ、そんな…じゃあ…これから救出に行ったら…アリカ様を傷つけることになるのですか?それじゃあ…どうすれば?あ…

「気付いたか。そ、俺達は何もしてないわけじゃない。ただ時を伺ってるのさ。それまでいろいろとしてるわけさ」

「そ、そうだったのですか…すみません。僕の短絡的思考のせいで」

「気にすんな。それも一時的かもしれねえが一番最適な手段だ。クルト、お前は聡明だ。これからお前はどうしたいか決めな」

「はい!」



アリカSIDE



これでいい。これでいいんだ。今日は私の処刑の日。皆が私に罵倒を浴びせてくる。私は気にしない。私の命で全てが収まるのなら。
私は上層部から罪人にされた。私の落ち度だ。繋がってることは知ってても不思議ではなかったのに。ナギがなんか言ってきてたが撥ね除けた。
私は牢に捕らえられて最低限の食事しかされてない。けど食べない。私なんかに食事など不要。そんな時だ。まさか私の前にリョウが現れたのは。

「よ、アリカ。随分痩せこけたな。ちゃんと食事を取らなきゃダメだぞ」

「お、お前!?どうやって!?」

「俺独自の情報網があるのさ。とりあえずヒドいことはされてないな。それだけでも報告できるな」

「…何しにきた。まさか…助けなど」

「まさか…その気はないよ。今はな。ただ…少し心配だったからな。ナギの奴が五月蠅いの何の」

「そうか…」

ナギめ…まだ諦めてないのか。あのたわけめ…

「そろそろ行くわ。さすがに長居するとバレるからな」

「リョウ」

「ん?」

「ナギに…伝えてくれ。お前といた一時、楽しかったと。決して忘れぬと」

「…伝えておこう」

ナギ…お前は変わった男だ。紅き翼全員だったが、お前が特にな。私の凍った心にズケズケと侵入してくる図々しさ。
あれだけ突っ撥ねても諦めぬしぶとさ。いつしか私の心はお前で満たされていた。だからこそ、感謝している。今の私に、恐怖などない。
私の極刑はこの魔法も何もかもが無力化される谷底。落ちれば底には狂暴な魔獣がひしめき、私を喰らうだろう。
ふっ…私にふさわしい末路だな。兵士が急かす。私はいつもの振る舞いで気圧す。言われるまでもない。私はゆっくり先まで歩み。
下は底無しと言ってもおかしくない深い谷。ナギ達はいないか。よかった。私のこの無残な最期、見せたくない。
私は自ら飛び降りた。このまま落ちれば死ぬであろうな。よしんば生きてたとしても魔獣に喰われてお終い。最期に、最期に正直になればと思った。
ナギ…私はお前のことが……

「迎えに来たぜ!お姫様!」

…なっ!なぜ…なぜナギがここに!私はなぜか涙を流していた。
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