短編

□何よりも愛しい存在
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サ「ナマエ、お皿洗うよ」



ナマエが片付けていた茶わんやお皿を流し台に入れるのを隣で見ながらおれは言った。



「いいよいいよ。私も…」


サ「いいからナマエはそこに座ってゆっくりしてて。」


くるりと回転させて背中を両手で押すと、しぶしぶナマエはさっき夕食をしていた目の前のテーブルの椅子に腰掛けた。



「いっつもなんかごめんね。」



申しわけなさそう笑っているナマエは、ルフィ、エース、そしておれの育ての姉ちゃん。


実際歳は自分と2歳しか変わらないが、血のつながらないおれ達兄弟を子供の頃から一緒に面倒を見てくれたとても頼りがいがある人で、兄弟の中でとても大切な人。



サ「大丈夫だから、気にすんな」



「うん。ありがと」



朝は大学のサークルの朝練で早く大学に行かなきゃいけないし、昼は基本誰もいないから、こうして夕食を食べ終わった後は毎日お皿を洗っている。



スポンジに洗剤をつけて洗い始めると、ナマエがテーブルに肘をついて口を開く。



「ホント、毎日お皿洗ってくれて助かる。」



サ「毎日ナマエの美味しい手料理、ご馳走になってるからな。これぐらいしないと」



一枚一枚
丁寧に洗いながらナマエに視線をあわせる。


サ「それにナマエ!おれが高校の時、一回高熱出したろ。めったに風邪なんか引かないくせに病院連れてったら“極度の疲労”って診断されて……負担かけてたの、知らなかったんだ。」


「それはたまたま色んな他の用事が積み重なってダウンしただけよ!」


サ「そうやって無茶するからああなったんだ。」

「うっ」



サ「んまぁ、取りあえず出来ないことがあったらおれに言って。
…多分そいつらは家事とか得意じゃないからさ。」



ナマエの座っている後ろを見ると、リビングのソファーで寝ているルフィとエースの姿が。





確か一回だけコイツらに言ったことあるな…


サ「お前らも手伝え!!」

って。そしたらあの2人



ル「おれは何も出来ねェ!っあ!ナマエのウマいメシを食うことは出来るぞ!なァ、エース!!」


エ「そうだなルフィ!!」


という残念な…いや、元々コイツらに期待なんかしてなかったけどな。



ルフィはともかく、エースはこっそりナマエのこと手伝ってるのかもしんねェけど。




「ふふっわかった。ルフィもエースも食べ終わってすぐに寝ちゃって…牛になるぞー?」



とか言いつつ、2人にそっと近づきふわりと毛布をかけてあげるナマエを見て、おれは微笑ましい光景だなと思った。



そうしてまた席に戻ったナマエは話しかける。



「ねーサボー」



サ「ん?」




「私、サボみたいな旦那さんが欲しいな!!」



ガチャン!



「!?どうしたのサボ!大丈夫!?」



サ「…あァ大丈夫。ギリギリ割れてない」



危なかった…!
ナマエの爆弾発言に動揺して洗ってたガラスコップが手からすべってしまった。



そのセリフと笑顔にドキッとしたおれは感情を抑えるために、流れる水音に集中する。




「自分がご飯作って、その後お皿洗ってくれる人ってなんか良いなって思った。お皿洗いって大変だからさ!」



サ「そしたらおれがナマエをもらってやるよ」



「期待してるぞー」



ふふふと笑いながらこっちを見るナマエ。



あ、今の絶対冗談って思ってるだろ。


おれは本気だからな。
後々覚悟しとけよ





お皿洗いも終わり、綺麗に水滴を拭きながら食器を全て棚にしまうと
座ってゆっくりしていたナマエが突然カバンを取り出してきた。



「えぇーと…あった!はいこれ」


渡されたのは見覚えのある小さなチョコレート。

「いつも助けてもらっているお礼!懐かしいでしょ?」


そうナマエは言って笑ってきた。



そうだ。思い出した…
ガキの頃ちょっとだけ手伝っていた時に頑張ったご褒美としてナマエからこの一口サイズのチョコレート、もらってたっけ。



不意にナマエがおれの頭をよしよし言いながら撫でてきた。



「疲れた後には糖分ね!それじゃあ私は仕事のレポート書くから…いつもありがとう。サボ!」



照れくさそうに感謝の言葉を言うナマエを「どういたしまして」と伝えて見送ったおれは、
小さなチョコレートを口に運ぶ。



その甘さに酔いながら
自分へのご褒美を噛みしめるのだった。



END





自分が料理して「美味しい」って言ってくれた後にお皿洗ってくれる男の子って、物凄くときめきますよね!!



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