短編

□全力で君を愛してる
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「サボおおおおおおおおおおおお!!!!!」


後方からおれの名前を大声で呼ぶ奴、その声の主に若干…というかかなりの寒気を感じたので、とりあえず全力でその場から逃げることを決断した。


「ちょ!!ナマエ!なんで毎回来るんだよ!!アッチに行ってろ!!」


勢い良くスタートを切って全速力で街中を駆け巡ると、同じようにナマエもニコニコしながら追いかけて来やがった。

「だって今日私サボとデートする約束した!!!」


「はっっっ!?ちょっと待て…!!今何と!!?」


「だーかーら!今日はサボ、私とデートしてくれる約束したじゃない?」


……いや、いやいやいや!!

「おれそんな約束した覚えとかねぇから!!」


「もうっ!!そんな照れちゃっ…「いや、照れてないぞ!」」


「まさか昨日の夜、本読んでてお話聞いてなかったとは言わせないよ?」


そのナマエのセリフに頭をフル回転させて昨日のことを思い出した。


『ねーサボー!』

『あぁ』

『その本読んでて面白いの?』

『あぁ』

『私の話聞いてる?』
『あぁ』

『…………………。サボ明日私とデートしてくれるかしら?』

『あぁ』



しっっっっ…!!しまったあああああああ!!
ついいつもナマエの話をサラッと受け流しているのが逆に悪い方向に行っちまった!どうしてくれるんだ昨日のおれ!!

そう考えていたらあっという間に逃げ道を断たれてしまった。
後ろには壁、前にはナマエ。まさに絶体絶命。


「さぁ、観念して大人しくデートしなさい!!!」

何故強制的な誘い方なんだ。

「大体お前がくっついてくるの見てる周りの奴らの視線が怖ぇんだよ本当に!!ナマエは気づいてないみたいだけど、ほんっっとにアイツらの殺意ハンパないんだからな!!?」


「…そっ!そんなのサボが何とかしてよ!!」

「いやナマエが何とかする問題だろ普通…!!大体、いつもいつもくっついて来て…何がしたいんだよお前は!!!」

半ばちょっとイラつきながら強い口調になってしまったおれは、しまったと思った。
案の定泣き虫なナマエは目尻にいっぱいの涙を溜め込んでいる。


「あっ…その…わりぃ…ちょっと強く言い過ぎた。」

俯いたナマエの前でオロオロしていた時、不意に服の裾を掴まれた。

「…デート。」


「…」


「サボのせい。だからお詫びにデート…」


「…」


「…………ダメ?」


肯定の返事をする前におれはナマエの手をギュッと勢い良く握って手を引いて街中へと歩き出した。


そしてナマエはさっきまで泣いてた顔が嘘みたいにまたパッと笑顔になる。



どうやらおれはナマエの上目づかいに弱いらしい。


そんな事を思いながら、彼女の歩幅に合わせるのだった。


END

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