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□一話
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元治元年 二月

蘭法医 雪村綱道の娘、雪村千鶴が新選組に保護されることになってから ふた月が経とうとしたある日のこと


広間で朝餉を取り終え、お茶をすする者や後片付けに取り組む新選組の幹部と千鶴

ふと新選組副長 土方歳三が

「そういやぁ 近藤さん、また幕府からめんどくせぇ頼みごとが来たんだけどな」

幕府からの頼みごと
その言葉に感嘆しながら
「幕府からの頼みごととは…うん、光栄なことだ!」

新選組局長 近藤勇が嬉しそうに頷く

「幕府からめんどくせぇ頼みごとって また厄介事?」

藤堂平助が声を上げる

「厄介事といやぁ厄介事だな」

土方の言葉に広間にいる幹部たちは 耳を傾ける
「して トシ 幕府からの頼みごととは一体どのようなことなんだ!」

近藤が期待に胸を膨らまし土方に話を促す

「あぁ なんでも長州が清から高値で買ったっていう武器を 隙をついて幕府が手に入れたらしい… まぁそこまでは良かったんだけどよ 幕府の連中 その武器を扱いきれないのか置き場に困ってるのか知らねえが ソイツを新選組に預かっておいて欲しいんだとよ
しかも 武器の維持費は幕府持ちで壊さないのなら その武器を新選組の方ですきに使ってもいいって言ってきやがった…」

「へ〜 たまには楽しそうなこと言ってくるんですね」

沖田総司がいつもの笑顔で言う

「まぁ屯所もせめぇけどよ その武器使わせてくるんだろ? なら悪い話じゃあねぇとは思うけどな…」

原田左之助が同意の声を上げる

「確かに どれくらいの大きさの武器が来るのか分からないが、八木家の人達にはまたご迷惑をお掛けしてしまうが… これも幕府からの御命令とあらば謹んで受けるまでだ!」

胸を張っていう近藤に

「さすが 近藤さん それなのになんで土方さんは めんどくせぇとか厄介事とか言うんでしょうねぇ… きっと性格があれなんですね」

土方をちゃかす様に
ニヤニヤと沖田が言う

「おい!総司 あれとは何だ! たっく、はぁ… ただ条件が良すぎて なんか引っ掛かる… まぁここにいねぇ幹部連中にも知らせる必要もあるしな また夕餉の後に詳しい事もきちんと話す まだ平隊士には くれぐれも言うんじゃねぇぞ」

睨みを軽く利かせる 鬼の副長

「では この話はまた夕餉の後だな… では皆! 各々仕事に行く様に」

近藤が声を掛け 広間を出て行った
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