Angel Beats! 〜イレギュラーな俺〜

□第3話
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 今、俺がいるのは校舎内。
 ちょっとだいたいすぎるか。
 正確には、掲示板の前だ。

 そこには、『Girls Dead Monster』と大きく書かれたポスターが至る所に張られている。
 というか、無造作に張られている。 
 ところどころ重なっているし、高さもばらばらだし。

 まあ、良いか。
 大々的にやるんだから、とにかく目を引けば良いんだし。

 掲示板のある廊下を後にし、ほとんど構造の知らない校舎を歩く。
 
 すると、ある教室が俺の目に止まった。
 
 そこは、おそらく軽音部室と思わしき場所。
 なぜなら、端の方に、ドラムが置いてあったからだ。
 
 俺は、何となくそこへ入り、ドラムの近くへ寄る。
 何か、ドラムをよく叩いていたような…。

 そうだ、ゲームだ!
 まさか、思い出すとは…。
 俺はよく生きていた頃にドラムのリズムゲームをよくやったな…。

 同じようなギターのゲームもあって、そのゲームをよくアイツと―――

 あれ…?誰、だった…?

 俺の大事な記憶の一つ。 
 もう一度、それを思い出そうとするが、今度はまったく分からない。
 
 大きく溜息を吐く。
 すると、ドラムと一緒にスティックもあった。
 もしかしたら、何か思い出すかもしれないと思い、俺は少しの間叩くことにした。






 10分ほど経ったところで、何か視線を感じた。
 
 それは、教室の入り口の方からで、そちらを向くと、少しおどおどした感じの少女に、背中にギターケースを背負っている少女二人。
 片方は、活発そうな感じで、もう一人は所謂姉御肌的なオーラを出している少女だった。

 「あ、ごめん。練習の邪魔だったかな?」

 一応、彼女らは軽音部に見えるので謝っておく。

 「いや、それよりも〜、すごく上手ですね〜、千崎さん」

 何故か俺の名前を知っている活発そうな少女。

 「俺の名前知ってるって事は、戦線のメンバー?」

 「ああ、そうだよ。あたしはガルデモのリードギターをやっているひさ子。で、こっちが入江、この騒がしそうなのが関根だ」

 「酷いですよ〜ひさ子先輩」

 一応、名前は覚えておくか…。
 ガルデモってことは、陽動班か…。

 「それじゃあ、練習の邪魔するのも悪いし、俺はここで」

 天使エリアの侵入という名前から、かなり大事な作戦だろう。 
 彼女らが不調だと、作戦に影響を及ぼすからな。

 「ああ、次のオペレーションに向けて頑張るとするよ」

 ひさ子が口元を緩めて、俺に言った。
 次の作戦の時、陽動班に入ろうか…?






 喉の乾きを潤すために自販機でコーヒーを買った後、先ほどの掲示板のある廊下を通りかかると、天使がガルデモのポスターを剥がしていた。
 その後ろからNPCが何やら文句を言っている。
 
 あれが、所謂ミーハーなヤツらか。
 ガルデモのライブが唯一の楽しみ…か。

 まあ、生徒会としては、勝手に掲示板に何か貼られたら、キチンと対応するよな。
 俺は、天使に少し興味が湧いた。
 たしか、こちらが武力行使をしなければ、向こうは何もしない、だったか?

 「よ、生徒会長」

 まずは、軽い口調で挨拶。
 
 「貴方は…、たしか夜の運動場で血まみれになった人を運んでいった…」

 「千崎、よろしく」

 「そう」

 天使はそれだけを聞くと、立ち去ろうとする。
 だが、

 「まあ、待てって。名乗ってくれるだけでも良いだろ?天使では、無いんだから」

 「立華」

 「下は?」

 「奏」

 立華奏か…。
 綺麗な名前じゃないか…。

 「そう言えば、自分は天使では無い、と言ったが…、それは事実か?」

 「その質問なら、初めてあった時にもしたわ…。私は天使なんかじゃないわ」

 やっぱりそう返してくるか…。
 俺は一息吐き、もう一度、立華に質問をした。

 「まあ、天使ではないとして、あの身体能力はなんだ?」

 「それを言うならば、貴方も充分規格外な身体能力よ」

 む、それを言うか…。

 「そのことについては何も言えないな。俺がどんな人間でどんな人生を送ってきたのか、ということは一つも思い出せていない。…いや、どんな人間かは、少しは分かっているか」

 「そう、記憶が無くてもそのうち戻るわ」

 お。俺の心配?
 嬉しいですねぇ…。

 それよりも、

 「俺たちの悪役をしているのに、一般生徒の悪役までするとはな」

 ここは、『役』という言葉を入れておく。
 絶対悪なんて、説明できるものじゃないからな。

 「………」

 天使は答えることなく、俺の横を通り過ぎていった。

 はあ…、質問の仕方が悪かったか?
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