Rewrite The Transcendental

□第三章
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―――ピピピピピッ

 電子音が部屋に響き渡る。

 「ん……。そう言えば…、巡回…か…」

 今日、学校でルチアに巡回に参加する、と言ってしまった。
 かなりの剣幕だったので、サボれば、鉄拳制裁だろう。

 「11時……。普段通りなら、もっとゆっくり出来るんだが…」

 世間一般的に、昼でも夜でも11時以降の活動が普段通り、というのはややおかしいだろう。
 そのことを分かっているにも関わらず、まったく直そうとしない。
 
 準備には数分ほどかかり、悪態を吐きながら森へ向かった。




 「…本当に来るとは…!」

 「だから、来るって言ったじゃないか!」

 静流は呆気に取られている。

 「てっきり、その場を乗り切るためかと…」

 「よし、お前は俺をそういうやつだと思っているんだな」

 「…そういうわけじゃない」

 零夜の言葉を否定するが、静流は視線を合わせていない。
 おそらく、そういうやつ、だと思っていたのだろう

 「来たんだから良いじゃないか。早く始めよう」

 「ルチアは来たのが嬉しいから早く終わらせて一緒にいたい……」

 「ち、違う!」

 踵を返して、森の奥へ向かうルチア。
 その後ろを静流、零夜の順で入っていった。

 




 まず、数の確認をする。
 さほど多くは無い。
 
 3人で、充分対処できる数だろう。
 
 右手にナイフを持ち、波導を纏わせる。
 刃の部分にのみ纏わせることで、普段の感覚のまま切れ味を格段に上げることが出来る。
 それに気がついたため、これからは基本、このやりかたで通していくことにした。
 

 最初に遭遇したのは中型の恐竜の魔物。
 初陣であったり、戦闘が苦手な人間であれば、ひとたまりもないだろう。

 地面を抉るように跳躍し、抜群の切れ味を誇るナイフで魔物の体を切断する。
 そして、ナイフを投擲し、刺さったところで爆ぜる。

 次にやってきた小型の魔物は中距離に入ったところで、槍を形成し、胴体へ投げる。
 そして、動きが鈍ったところで、胴体を切り裂いた。

 「青野!そっちは終わったか」

 戦闘が終わったのか、ルチアが近くにやってくる。

 「ああ、それと、珍しく中型を見た」

 「こちらも、一体確認した。静流の方へ向かおう」

 「了解」

 周りを警戒しながら、静流が戦闘をしているであろう場所へ向かう。

 「静流!そっちはどうだ」

 「…中型が二匹。珍しい」

 「まあ、向こう側で何かあったんだろ。下っ端の俺らが気にする事じゃない」

 「お前は部隊長になることもあるじゃないか…」

 零夜は隊の数が多く必要な時は隊長になるときがある。
 この2人よりも立場は上だが、職務を全うしているとは到底言えないだろう。

 この後、冗談を言い合いながら、いつも通りに、別れた。
 だが、零夜だけは自宅に帰らず、森を徘徊していた。

 そして、ある地点に来ると、立ち止まり、周りを気にし始めた。

 何をしているのかと言うと、戦闘中に結界があることに気付いた。
 閉鎖空間のようにガードの高い結界では無かったので、やや興味本位を含みながら、探索することにした。

 零夜の能力は《現世と隔離された場所を探知し、行き来できる》能力。
 あくまで自己の推測の為、本来の目的は分かっていない。
 閉鎖空間はまだ行き来できないが、魔物によって作られた結界ならば行き来することが出来る。

 黒である、零夜の目が暗い赤になり、結界の内部へ侵入する。

 そこには、ガーデニングによって、たくさんの花や植物があり、その中心には、イスと机がおかれている。
 何の目的かは分からないが、遊びの隠れ家とは言い難いだろう。

 さらに、結界の端を辿っていくと、一定の間隔の場所に木彫りの動物が置かれてあった。
 おそらく、これが結界を作っているのだろう。

 しかし、それには触れずに結界の外へ出る。

 誰のものか分からない結界を壊せば、とんでもないものが出てくる可能性もある。
 
 そのため、結界を出た後、すぐに自宅へと戻っていった。






 次の日、毎回ルチアに連絡をされるのは迷惑というわけではないが、やめて貰いたい。
 そのため、HR直前に教室に入った。

 すると、既に教室にいたルチアが所謂どや顔で零夜を見ていた。

 「よく遅刻しなかったな。これからは、毎回連絡を先生にしておこう」

 「止めろ」

 「それなら、遅刻しないことだな」

 結局言い返せない事なので、溜息を吐きながら席に着く。

 だが、いくら遅刻をせずとも、授業をまともに受ける気など毛頭無い。
 さらに、昨日は活動時間がいつもと違ったため、眠気が酷く、昼休みもずっと寝ていた。

 放課後、まだ眠気が残っているが、ここにずっといるわけにもいかない。

 



 「………」

 無言で朱音の部屋に入る。

 「やっぱりあなただったの…」

 いつものように朱音の溜息。
 だが、いつもよりメンバーが増えていた。

 「ん、お前は青野か」

 「お前らは……、天王寺とコウベかと誰かか」

 瑚太郎の名前は覚えているものの、小鳥とちはやの名前は覚えていないようだ。
 小鳥に至っては、読み間違いだ。

 「こらこら〜、あたしゃ、カンベだよ〜。兵庫の都市じゃないって〜」

 「私も、廊下で会ったことありますよ…」

 「名前を聞いた覚えはない」

 「人の名前を覚えなかったら、社会で恥をかくわよ…」

 溜息混じりに言う。
 だが、零夜の答えでさらに大きな溜息を吐く。

 「そんな職業に就かないように努力している」

 随分と的外れな解答だが、ある意味、的を射ているのかもしれない。

 「そういえば、ここは何なんだ」

 「え、知らないのか?一応オカルト研究会、略してオカ研だ」

 「話してなかったわね」

 「朱音さん話してなかったんですか…」

 ちはやは少し、意外そうに言う。

 「別にいいじゃない。聞かれた事もないし」

 「とにかく、青野はオカ研に入るのか」

 「ま、そういうことだな」

 一連の流れから、否定する事も無いので、オカ研の参加を決めた。
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