Rewrite The Transcendental
□第五章
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テストも終わった数日後の夜。
巡回の為、森で戦闘中の出来事である。
「チッ………」
苛ついた感情のせいか、舌打ちが漏れた。
理由は、森の入り口近くで追っていたハウンドタイプの魔物1匹が街の中に逃げ込んだからだ。
コートのフードを深く被り、誰にも聞こえないような声で呟いた。
「ハウンドタイプを見逃すなよ………」
そして、零夜より先行していた静流が魔物を給水塔の上で倒した。
静流が給水塔から離れた後、そこへ飛び移り、一息吐こうとした。
だが、そこで予想外の出来事が起こった。
「……………!」
視線の先には、見知ったような顔がこちらをじっと見ていた。
ロングコートとフードを羽織っているが、慎重に顔を確認すると、やはりそれは瑚太郎だった。
零夜は溜息を吐いた。
魔物を逃がしたせいで、瑚太郎に面倒なネタを与えてしまったからだ。
瑚太郎に移ったのは、大型の犬の影。
突然の事に、気のせいかと目を擦って見直すと、フリルの付いたスカートを着ていると思われる少女。
しかし、その少女は人間離れした跳躍力で給水塔から去った。次に現れたのはやや長身のロングコートかローブを羽織った人間。
そして、その人物も闇に消えるように見えなくなった。
彼は、好奇心と興味で女の子、つまり静流が向かった方向へ走っていった。
「逃がしたのは誰だ」
森からの帰り道、零夜が唐突に二人に呟いた。
すると、ルチアが伏し目がちに零夜に伝えた。
「わ、私だ。…すまない」
逃がしたのはルチアであった。
彼女は、零夜から叱責を受けると思っていた。
「別に失態を責めるつもりはない。ただ…、魔物使いにも見境のない奴がいる。そこのところは、肝に銘じておいてくれ」
「ああ…。分かった」
零夜自身、責めているつもりはないが、ルチアの責任からか、やや思い歩調で歩いている。
そんなルチアの様子を見た静流が零夜に向けて言った。
「げんなじーのところへ行こう」
「断る」
静流の唐突な提案を即座に却下する零夜。彼女の言う、げんなじー。本名、ゲンナジー・エドゥアルトヴィッチ・カワチエーワ。
江坂と同じ、元・バイアーン帯剣緑地騎士団のメンバーの既に引退した老人だ。
「俺はあそこが嫌いだ」
「そんなことを言うな。げんなじーがメンラーを奢ってくれる」
ゲンナジーの豪快な正確からか、零夜は苦手としているが、静流も諦めず、ルチアにも話を振る。
「るちあも」
「あ、ああ。私も久しぶりに行ってみたい」
「わかりましたよ。行きましょう………」
肩をすくめると同時に溜息を吐く零夜。
心の中では、少しはルチアの気分転換にもなれば、重畳だな…、と零夜が珍しく他人を気遣っていた。
「おう、らっしゃい。ぶっきらぼうな若造とお嬢二人さん。ルチア嬢と零夜は久しぶりだな」
「珍しいな。青野が来るなんて」
三人が屋台の近くに来ると、ゲンナジーが中から顔を出した。他の常連のメンバーである関目などといったメンバーが零夜がここへ顔を出したことを珍しく言う。
実際、零夜はここへ顔を出したことは片手で数えるほどしかない。
「……………はぁ」
「おいおい。溜息が返事とはぁ、随分としけてんなぁ…」
笑顔で零夜の肩をバシバシと叩くゲンナジー。
心の中で、まるで酔っぱらいだ…、と盛大に溜息を吐いていた。
「それじゃあ、メンラー3つ。俺の奢りだ!」
「俺は食わない」
「そういうなって。食ってけ、食ってけ」
「……………」
ゲンナジーの豪気な押しにあきらめを感じた零夜。観念して、夜の公園を軽く見渡した。すると、零夜の目に人影が映った。
「お?こんな時間に人だな」
ゲンナジーも人影に気付き、躊躇うことなく、その人影へ向かって行った。
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