Rewrite The Transcendental
□第六の二章
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路地裏でとあるビルの壁を黙視する人影。
無骨な黒いロングコートを羽織っているため、ただじっとしているだけのため、人によっては怪しく見えるだろう。
だが、そんなことを露ほど気にせず、五分ほどするとまた路地裏に奥へ向かった。
壁を黙視していた人物、青野零夜は風祭のガイアが作った空間への入り口を探っていた。
正式名称はガイアやガーディアンによって圧縮空間とされている。
彼はそれを少しでも知るために、入り口と言える場所や切れ目のような境を捜していた。
零夜の超人としての能力である”超越する力”。まだ完全に使いこなせているわけではないが、曖昧な感覚で入り口らしき場所を見つけることが出来ていた。
そして、また一つ入れそうな場所を見つけたため、目と伸ばした右腕に力を入れる。
「………ッ!」
手を伸ばすと共に、伸ばした右手から世界が変化していくことを肌が感じる。このまま乗り越えようと足を踏み出した瞬間、全身を電流のような衝撃が走り、咄嗟に全身を引いた。
こういうことは何度かあったため、零夜は何らかのセキュリティシステムの一つではないか、と考えている。
大体は入れそうな場所を見つけても、先ほどのようなセキュリティが発動し断念せざるを得ない状況が続いていた。
特に収穫も無く、ただ時間を浪費しただけだったが、これ以上ここにいても仕方が無いと思った零夜は自宅に帰ろうか、と考えていた。
(零夜…?こんなところで何を…)
その様子を偶々見かけた人物、此花ルチアは格好や行動共に不審な零夜に声を掛けようと思ったが、零夜が何となく振り向いた拍子に物陰に隠れ、結局は後を付ける形となっていた。
何となく、収穫が無いのが癪だったのか、帰路につくまで当てずっぽうで調べてみることにした。
先ほどのように壁をじっと見つめるのではなく、傍から見れば、挙動不審状態のようにきょろきょろする零夜が余程不審に見えたのか、ルチアは何をしているのか問いただそうと思い、また壁を見つめだした零夜の肩を叩きながら声を掛けた。
「零夜、何をしているんだ?」
ルチアが近づいて居たことに全く気が付いていなかったのか、肩を叩かれると同時に、距離を取って訝しそうにルチアを見据えた。
「…何のようだ」
「お前が何かおかしな事をしようとしていたから声を掛けたんだ」
「……………」
零夜は、自分が声を掛けられるほど挙動不審だったのか、と疑問に思ったが、それをルチアに聞くのは藪蛇だとこれまでの経験上悟ったので、そのまま立ち去ろうと踵を返したが、辺りの様子の変化を感じ取ったのか、足を止め空を見上げた。
「どうした?」
零夜は答えることなく上を指差す。
「圧縮空間…か?ここは」
何がきっかけとなったのかは不明だが、圧縮空間に足を踏み入れてしまった二人。
いくら不測の事態とはいえ、ルチアと行動することが面倒と考えた零夜はすぐに出ようとまた境目を探し始めた。
(ここ………どこだ?)
だが、零夜の能力は自分の位置をある程度把握してなければ発揮できず、自然と脱出できるのを期待するしかないだろう。
「れ、零夜…?目が…」
能力を使ったままの零夜の瞳が赤く染まっている。
それを心配したルチアは彼の心配そうに覗き込む。
「お前に関係ない」
だが、零夜は顔を逸らしながら目を覆い隠し、一人で歩き出す。
一人残されそうになったルチアは慌てて零夜を追いかけた。
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