Rewrite The Transcendental
□第七章
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ある日、瑚太郎はいつも静流と昼食を摂っている裏庭で零夜を含めた三人で話をしていた。
瑚太郎曰く、またこの間の猫のこととサッカーボールと同じようなことがあったらしい。
「ルチアにまた何かあったのか」
「察しはついているみたいだな。…ま、そんなとこだ。零夜は委員長から何か聞いていないか?」
「……………いや、特に」
一応返事を返している零夜だが、表情と言葉に感情が篭もっていない。まだ先日の夢とMenという人物からのメールが尾を引いているのかもしれない。
「コタロー。コタローのしていることは、もしかしたら………」
「ん?」
「……………」
静流も静流でルチアのことを大事に思っているため、慎重にことを運びたいのか、いつも以上に言葉数が少ない。
「零夜」
「……………何だ」
「さっきからおかしい」
「それはお互い様だ。お前はアイツのことに少し慎重になりすぎだ」
珍しく零夜から出る重苦しい沈黙の空気。
その沈黙を破ったのは静流だった。
「ルチアについては私に任せて欲しい」
「そりゃ、何でまた」
「女の子どーしは女の子どーし」
「そう言われるとな………」
「コタローとルチアを見ていると、もっと拗れるかもしれない。」
瑚太郎は、ルチアのことを知らない。
いくらここ一ヶ月オカ研で活動を共にしたと言っても、静流や零夜と比べれば断然短い。
「拗れても、俺は放っておけない。…なら、まずは近いところからじゃないか?」
「鳳とのことか」
「ああ。だから、まずは静流と零夜が委員長を。俺がちはやから話を聞いてみる。それなら良いんじゃ無いか?」
「わかった」
今後の基本方針が決まったところで、瑚太郎は一番疑問に思っていたことを率直に伝えた。
「ぶっちゃけ、委員長は潔癖症なのか?」
「何故?」
静流はルチアが潔癖症と思われていたことを知らなかったようで首を傾げる。
瑚太郎はおかしいな、と思いながらも以前あった猫やサッカーボールの件を伝えた。
「コタロー」
「ん?」
「お前はるちあとちーの友人なのか?」
「そのつもりだ」
「なら友人の友人だから、私とも友人だ。そして、ルチアの友人の零夜とも」
そして、じっと瑚太郎の目を見つめた。
「話しても良い。だから、零夜も協力してほしい」
「別に構わないが…。乗り気じゃないからな」
「零夜もどうした。お前らしくないぞ」
いつも本意でないことは断るが、頼み込まれれば折れる零夜。
しかし、今回は迷っているフシが垣間見えたのか、瑚太郎が心配そうに視線を向ける。
「…問題無い」
放課後にゲンナジーがいつもいる公園に集まった三人。
「ルチアは別に潔癖症じゃない」
「じゃあどうして、そういうことになってるんだ」
「……………」
「四六時中、すっと手袋をしてる。さぞや暑苦しいだろうよ。…そこまでして、何で潔癖症じゃないなんて言えるんだ?」
「あの手袋に意味は無いらしい」
そこへ、零夜が初めて口を挟んだ。
「意味はないのか…?」
「前に手を見たことがあるはず」
瑚太郎はルチアの手を見たことがある。
零夜も一年の付き合いだ。手を何度か見たことはある。
「手袋の必要なんてない…。でも、彼女は手袋をしないと、…怖いんだ。」
一度息を呑んだ静流。
だが、その回りくどい言質の本来の意味を知った零夜は顔を顰めた。
「不潔だからか」
「…不潔だからだ」
「ちょっと待て、それを巷じゃ潔癖症って言うんじゃねえのか」
瑚太郎の疑問は的を射ている。しかし、静流は首を振る。
「違う。そうじゃない」
「あいつは綺麗な白い手だった」
「そうだ。ルチアの手は綺麗な手だ」
その言葉に瑚太郎は戸惑った。
すると、また黙り込んでいた零夜が堪えかねたように言葉を放った。
「回りくどい言い方は止めろ…。事実をただ端的に述べるだけだろうが」
「…零夜?」
「不潔だ、と言ったな。だったら何だって言うんだ。………いや、すでに答えは出ているか」
不快感を露わにした零夜はそのまま振り返ることなく公園を去っていった。
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