Angel Beats! 〜イレギュラーな俺〜
□第3話
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ある日、戦線本部ではガールズデッドモンスター、通称ガルデモのボーカル、岩沢が新曲を演奏していた。
アコースティックギターの音色がすごく良いな…。
そして、演奏が終わったところで、
「なぜ、新曲がバラード?」
ゆりが両手を組んで岩沢に訊く。
「いけない?」
やや厳しい表情のゆりだが、岩沢は気にしていないように見える。
「陽動にはね」
「あぁー、その陽動ってのは?」
すると、音無が手を挙げ、陽動について質問する。
まあ、前回のあの様子じゃ分からなくてもおかしくないか…。
「トルネードの時に聞いてなかったの?彼女は校内でロックバンドを組んでいて一般生徒の人気を勝ち得ている。私たちはNPCに危害を加えることが出来ないから、時に利用したり、妨げになる時はその場から排除しなければならない」
「…NPCってミーハーな奴なんだな」
「でも、ミーハーな奴が嵌ってるんだから、それだけ人気があるんだろ?」
俺がゆりに訊く形で言う。
トルネードの時、食堂の外から聞いていたが、結構良かったな…。
「で、ダメなの?」
「……バラードだと、しんみり聞き入っちゃって、私たちが派手に振る舞えないから」
少し考えてから、ゆりが遠回しに没と言う。
たしかにバラードやっている間に外でドンパチするのはおかしいか…。
「そう、じゃあ没ね」
あっさり受け入れるもんだな…。
俺だったら、結構押すけど…。
「それじゃあ、総員に通達。音無君、カーテン閉めて」
カーテンを閉め、部屋が暗くなったところで、プロジェクターに画面が映る。
「今回のオペレーションは天使エリアに侵入作戦のリベンジを行う」
ゆりがそう言うと、部屋の中にざわめきが走る。
…天使エリアって何だ?
すると、ゆりがイスに座ったまま、横にずれると、眼鏡を高松と同じように知的に動かす少年が現れた。
「眼鏡被り…」 「机の下から…」 「そんな青びょうたんが使いモンになるのかよ」
あちこちから上がるこの少年の印象…?
「まあまあ、そんなこと言わないの」
「はっ!なら、試してみようじゃねえか!」
バカの野田がハルバードを眼鏡の少年に向ける。
オイ、こんなところで暴れるな。
「お前、友達いないだろ」
音無がズバッとツッコミを入れる。
…気にしていないようだが。
すると、眼鏡の少年は、フッ、と嘲笑うように言うと、
「3.14159265………………」
円周率を言い始めた。
野田は何故か頭を抱えてのたうち始めた。
円周率如きで…。
「私たちの弱点は、アホなこと!」
リーダーが…。
というか、大山とかどうなんだ…?
役に立つ奴いないのか…?
「前回の作戦では、我々の頭脳の至らなさを思い知った。だが、今回は天才ハッカーの名を縦にする通称竹山君に天使エリアを綿密に調べて貰うわ」
「今のは、本名なのでは?」
「通称ハッカーで良いだろ」
すると、竹山が、
「僕のことはクライストとお呼びください」
『…………………』
竹山が、ビシッ、と指を指す。
本人は、決めたかったようだが、本部に沈黙が流れる。
「そういや、天使エリアってどんなところなんだ?」
音無が俺も訊きたかった事を日向に訊く。
「天使の住処だ」
天使の住処…だと?
そこに、ハッカーが果たして必要なのか…?
「中枢はコンピューターなんだぜ」
「機械仕掛けなのか!?」
おそらく、違うことを想像している音無。
今、何を想像しているんだ?
「その何処かに神への道があるの」
「「こいつはとんでもない作戦だ!」」
大山とセリフが被ってしまった。
「二度目の侵入ということもある。天使は今以上に警戒してくるに違いない。ガルデモには一丁派手にやって貰わないとね」
「まかせて」
岩沢が自信満々といった表情で頷く。
やっぱ上手いんだろうな。