Rewrite The Transcendental
□第四章
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放課後、オカ研の活動も終了し、風祭市内を特に目的も無く彷徨いていた。常に気を張って、ガーディアンの仕事をやる気は毛頭無いので、二週間に一度は、こうしている。
すると、後ろから誰かに背中を叩かれた。
「よ、青野。こんなところでなにやってるんだ?」
「お前こそ何やってるんだ?」
質問に質問で返すのは不躾な行為だが、相手が瑚太郎だったため、この際気にせず訊いた。
「俺はバイトで使うカメラを探しているんだ」
「カメラ…、ってことは、雑誌か何かの記事か?」
「そうそう。だから、性能が良くて安いカメラ知らないか?」
「そういうのは、ネットのオークションや通販。後は、ジャンクを漁れば良いんじゃないか?あとは、新品の中の掘り出し物を捜すとか」
「なるほどな………。それも有りだ。ということで、カメラ探すの手伝ってくれないか?」
「まあ、別に良いぞ」
特に用事も無く、暇をもてあましていたので、瑚太郎と行動を共にすることにした。よく考えれば、誰かと行動を共にするのは、久しい気がした。
「よし、まずは大手家電メーカーだな」
「性能や品質が保証されている分、値が多少張るかもな…」
「性能が良かったら、ある程度の値段は大丈夫だ」
「ところで、何のバイトするんだ」
零夜は、雑誌関係と予想していたが、結局聞いていなかったので、瑚太郎に言ってみた。
「月刊テラって知ってるか?雑誌の」
「『いい年こいて自由研究』とか、あなたのそばの…ってやつか?」
「そうそう、よく知ってるな」
「情報収集は必要なことだからな」
「そ、そうか………?」
「市内の情報とはいえ、知っている事が多い方が良いだろ?ネタも集まりやすいし」
「なるほど。…ふむ、青野が活動に積極的になるとは…」
俺はナマケモノか、と零夜は思うが、口には出さなかった。つい、溜息が出そうになる。だが、冬の訪れを感じさせるような北風が身を包み、くしゃみが出て、タイミングを失ってしまった。
同時に、もう冬か、としみじみと思う零夜だった。
「これはどうだ」
「………んー、性能より、デザインよりだから、少し値段が高い方じゃないか?」
二人はとある小売り販売店で店頭に展示されているカメラを一つ一つ見定めるが、なかなか性能と値段が一致する物が見つからない。
「おお〜。青野じゃねえか」
「青野。知り合いか?」
「違う」
零夜に声を掛けたのは、現代風の格好に、茶髪でサングラスをずらしてかけている男。所謂、チャラ男という人間だ。
「おいおい、その態度は無いだろ………。それで君は?」
「俺、天王寺瑚太郎っていいます」
「へー。天王寺君ね。青野と同じその制服ってことは風コー?」
「はい」
話しかけてきた今宮新は少し考え込んで、やや含みのある感じで行った。
「なるほどな。マットーな学生さんやってるんだな」
今の言葉に零夜の目が鋭くなる。
だが、瑚太郎の前で言えるような内容ではないので、今は諦める。
「それで、青野と天王寺君はなにやってるの?」
「カメラを探しています」
「カメラ?何に使うの?」
「雑誌の記事作りです」
「へー。じゃあ収穫祭狙ってるんだ」
年に一度、風祭市で行われる収穫祭。その時期になると市内の雰囲気ががらりと変わる。そして、バイトの募集も増え、収穫祭中の短期のバイトの募集が多く目につく。
「はい、狙っています」
「それじゃあ、これなんてどうだ」
「却下。こんなチャラい男が言うことは信用できない。もしかしたら、どっかの企業と繋がっているセールスマンかもしれん」
「たしかにそれも一理ある」
「おいおい、そりゃ無いぜ…」
零夜の冗談に笑いながら肯定する瑚太郎。
二人の反応に、今宮は肩を落とし、落ち込んでいた。
「青野、今日はありがとな。おかげで良いモンが見つかった」
「気にするな。良い暇つぶしになった」
「それにしても、会長も言ってたけど口数前より増えたよな」
しみじみ言う瑚太郎。
俺はそんなに暗い性格なのか?と自分の最近を振り返ってみるが、特に思い当たらないので、適当に冗談を言った。
「思春期なんだ」
「一理ある」
二人は口元を緩ませる。
「じゃあな。また明日」
瑚太郎が去ってから、零夜は考える。
今日のような、楽しい日常は絶対に続かない。それを胸に刻みつけながらも、今を少しは楽しもうと自分に言い聞かせた。
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