◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 12  記憶の置き場所 *
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―― あれ?あの名前って……。

自分は、あまり勝ち負けとか優劣とか気にしない性格だけど、学期末試験の結果発表貼り出しには、首席でいなくちゃいけない事情があり、確認しにやってきた。
特待生で入学している自分は、今回の結果は在学の条件である首席をキープしていたけれど、自分の名前より先に上がっていた「鈴川 志衣里」という名前に反応してしまった。

「なんだよ、ハルヒより先に名前があがってる奴がいるじゃん」

自分に付き合って、見に来ていた光が少し不満そうに言う。

光はクラスメイトで、入学当初は全く話しもしなかった。
でも、最近、入る気もなかった「ホスト部」とかいうわけのわからない部活に入ることになって、そこの部員でもある光と双子の弟の馨が急に自分と関わってくるようになった。
自分としては、その部活に入った理由が、800万円する高価な花瓶を割ってしまった弁償に、部活動を強いられるようになったわけで、特別仲良くしたいわけではないんだけれど……。
ホスト部の活動は、自分には全く理解ができないことばかりで、部に遊びに来る女の子達をよくわからない設定でもてなすっていうことの繰り返し。
『よくわからない設定』とは、自分に言わせれば、金に物を言わせたような、世界の民族衣装やお祭りを模したものを開いては、それに合わせたもてなしをしている。
部員にも設定がいろいろあって、部長である環先輩はbPの人気だそうで、「キング」って呼ばれているらしい。自分からすれば自称だと思うけれど……。
双子は部活では美しい兄弟愛みたいなのを売りにしてるけど、本性は悪魔のようなところがあって、人を困らせて喜んでいるような性格には呆れるし、どちらかといえば、関わりたくない。
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