◆『どこまでキコエル』長編小説◆
□* 20 アシンメトリーとシンクロ *
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「ま、『普通の女の子』で、よかったじゃん」
兄貴っぽい俺の言葉に、馨は少し驚いてから、クシャっと顔を笑顔にさせた。
「でもね、光。これって恋とはちょっと違うかも。もっと深いかもしれないけど、どちらかというと気持ちが穏やかな方向。彼女を独り占めしたいとか、好きでたまらないとかとは、ちょっと違う。」
「だな。それを言うなら、まだハルヒの方が近いんじゃない?だって、あいつは俺らだけのオモチャだし」
何でハルヒの名前が一番に出てきたのかは、少し自分でも不思議だったけど、誰かに取られて悔しいのって、お気に入りのオモチャと同じくらいにしか、俺には恋とかって分からない。くだらないかもって、どこかで思ってる。馨もきっと、そうだと思う。
「ただね…僕、鏡夜先輩は、僕のそれとは違うと思うんだ」
馨から意外な人物の名前が出てきた。
「え?なに?鏡夜先輩、鈴川さんのことが好きなの?」
「たぶん。本人は自覚してないみたいだけどね」
ちょっと膨れながら困った顔をしている馨を見て、まさかねと思って、気にもしなかったけど、俺らがこんな話をしている間に、それが本当かもしれないと思わせるような事件が起こっていたのを聞いたのは、後になってからだった。