◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 20 アシンメトリーとシンクロ *
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乗馬大会ツアーの夜は、会場の近くのホテルでホスト部のお客さんたちとディナーで終わって、そのまま俺たちは、鏡夜先輩のところの別荘に泊まることになった。
そこには、何故か、鈴川さんも一緒にいた。

大会が終わって、日帰りで帰る予定だった彼女を、落馬のことを心配して、俺と鏡夜先輩以外のホスト部全員が引き止め、無理やり引きずって連れてきたようなもんだった。
ハルヒの友達だし、馨のことでちょっと気になることもあったから、それに反対する気持ちもなかった。

別荘では、俺はいつもと変りなく、馨と一緒にあれこれとハルヒをいじって遊んでいる。鈴川さんは、少し眠そうに、それを楽しそうに見守っている感じだった。
誰かがトランプで大貧民をやろうと言い出して、全員で遊び始めたけど、鈴川さんは落馬したことでなのか、疲れて、俺らにお詫びしてから先に眠ってしまった。

少し前までは、こうやって「誰か」と遊ぶなんて、考えてもみなかった。
いつも馨とだけ一緒にいて、それでよかったし、でも、どこかで、それだけじゃ満たされない気持ちもあった。
馨も同じ気持ちだっただろうけど、どこかで、少しだけ、俺と違うところもあって、俺が兄だから強引に、二人だけの世界に連れ込んだのかもしれないと、ほんとにたまにだけど、思うこともあった。
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