◆『どこまでキコエル』長編小説◆
□* 21 招かざる客 *
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「ご迷惑をおかけして、すみません」
彼女とのまともな初めての会話は、俺への謝罪から始まった。
乗馬大会で落馬したことで、環がいつものように騒ぎ立て、ハニー先輩、馨、ハルヒ、そしてモリ先輩もが、そのまま帰宅すると言っている彼女を強引に引き止め、ホスト部ツアーの後に宿泊する予定の俺の家が所持している別荘に、彼女も連れていくことになった。
こちらのツアー企画を知らない彼女とは夕食は別にとることになったが、彼女の世話は俺の執事に任せることにして、後で別荘に合流することになった。
「いえいえ。こんな形で騒がしくお引止めしてしまって、返ってご迷惑だったでしょう」
見抜かれないように、いつもしている笑顔で返す。
何故か、一瞬、彼女は俺の顔をじっと見つめ、変な間があったが、すぐに彼女も笑顔を見せて、
「色々とお気遣いもいただいて、こちらこそ、すみません。」
期待していたわけではないが、彼女との会話が、あまりに空虚なものだったので、少し苛立つ自分がいた。
別荘では、ホスト部メンバーが彼女にいろいろと話しかけたり、トランプに誘ったりしていたが、人を見抜く俺だからか、周りが気が付いていないだけかはわからないが、どう見ても疲労の色が見られる。俺も今日はこの喧騒から離れたかったので、彼女に助け舟を出した。