◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 4 * かわされた敵意
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しかし、鈴川本人は聞かれたことに明るい笑顔でまっすぐ答えていて、隠し事や後ろめたさを感じている様子は全く無かった。

席が近い俺は、鈴川の姿が視界に入り、特に耳をそばだてているわけでもないが会話の内容が聞こえてきた。
鈴川の両親はイタリアに住んでいて、父親はその業界では結構有名なガラス職人らしく、
工房を空けることができないため、こちらへは一人で帰国したらしい。
日本と違ってイタリアは14歳の9月からが高校教育で6月で1学年の修了となる。
既に2年生だった鈴川は1カ月繰り上げで学年修了しキリのいいところで転校してきた。
 
「そうなんですの?!鈴川さんは、とても優秀でいらっしゃるんですね!」

「ちっとも優秀なんかじゃないですよ。学年修了条件だった課題の提出がたまたま終わっていたので、ギリギリセーフ!!それが無かったら落第確実でした。」

嫌味なく笑って開けっ広げに自分のことを話す。
人見知りもなく、堂々としていて、それでいて親しみやすい性格。 
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