◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 4 * かわされた敵意
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鈴川が転校してきてから何度か彼女を図書室で見かけた。
話しかけようかと思っては二の足を踏んでいた。
彼女がいつも図書室で見ているのはでっかい分厚い芸術品の写真集や絵画の画集だった。
向こうで芸術系の専門高校に通っていただけあって美術部に入ったらしく、部活で使う資料を見ているようだった。

ある日の放課後、図書室でちょっとした事件が起こった。
あの日、図書室へ行かなかったら、俺は未だに鈴川の横顔しか見れなかったんだと思う。

家柄もなく財力もそれ程あるようには見えない鈴川の家のことで、中には何故か悪意を持って事実ではないようなことを言い出して中傷するような奴もいた。
彼女がいない教室で、時々そういう噂を耳にして、こういうお金持ち学校でもそういうくだらない奴がいることはちょっと驚いた。
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