◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 5 * それなら向き合うだけ
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部活の片付けを終えて、いつの間にかモリ先輩がハニー先輩のところに来ていた。
ハニー先輩の話を聞いて、付け加えるようにモリ先輩が言った。

「彼女は幼い頃からお祖父さんに護身と礼儀作法を身に着けるため合気道を教えられてきたらしい。」

「それでねぇ、ちょうど空手部が中・高合同稽古をやってたから、チカちゃんたちに相談して、
稽古が終わってから道場を貸してもらって、シェリーちゃんに合気道の演武を見せてもらったの。
受身の相手役は僕がやったの。
シェリーちゃん合気道すごく上手で、どんな技でもかわされちゃうから楽しくなっちゃって、
あれこれシェリーちゃんに教えてもらってたら、チカちゃんが怒りだしちゃって・・・。」

チカが怒り出すのはお約束だ。
チカはハニー先輩のことをすごく嫌っている。
武道を志すものとしてハニー先輩のような己に甘い性格が許せないようだ。
しかも、ハニー先輩は空手と柔道で全国制覇を成しておきながら、ホスト部へ入るために高等部の空手部主将を辞めてしまったわけだ、
その部活の道場で中途半端なことをするのは侮辱されているようで許せないのだろう。
ましてや猛者と呼ばれたハニー先輩が本気を出していない演武は、
傍から見れば小さな二人がじゃれあっているようにしか見えなかっただろう。
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