◆『どこまでキコエル』長編小説◆
□* 7 * 初めての再会
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追いかけなかったんじゃなくて、追いかけられなかったんだ。
僕には、どうやってそうしたらいいのか分からなかった。
話しかけるって、どうやって?
僕は彼女のことをすごく知っていても、彼女は僕なんて知らない。
もし、呼びとめて迷惑そうな顔されたり、怖がられたりしたらどうしよう、
だいたい、何て言って声をかけたらいいんだろう?
この学校に来たことすら知らなかったし、そんな子が来たって噂も聞かない。
理由があって素性を隠してるとかだったら、
僕が彼女のことを知ってるのは迷惑かもしれないし・・・。
初めて自分のことを知ってもらうって、こんなに、怖いことなんだ。
だけど、どうしても、切り抜きの彼女じゃなくて、僕を見ている彼女と向き合って話してみたい。
シェリーの声を聞いてみたい、笑った顔を見てみたい、
彼女が作品を作る指を見てみたい、いろんな話をしてみたい。
ライバルだって思っていたのに、こんなに切なくなるなんて、悔しい。