◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 7 * 初めての再会
5ページ/10ページ

追いかけなかったんじゃなくて、追いかけられなかったんだ。
僕には、どうやってそうしたらいいのか分からなかった。
話しかけるって、どうやって?
僕は彼女のことをすごく知っていても、彼女は僕なんて知らない。
もし、呼びとめて迷惑そうな顔されたり、怖がられたりしたらどうしよう、
だいたい、何て言って声をかけたらいいんだろう?
この学校に来たことすら知らなかったし、そんな子が来たって噂も聞かない。
理由があって素性を隠してるとかだったら、
僕が彼女のことを知ってるのは迷惑かもしれないし・・・。

初めて自分のことを知ってもらうって、こんなに、怖いことなんだ。

だけど、どうしても、切り抜きの彼女じゃなくて、僕を見ている彼女と向き合って話してみたい。

シェリーの声を聞いてみたい、笑った顔を見てみたい、
彼女が作品を作る指を見てみたい、いろんな話をしてみたい。
ライバルだって思っていたのに、こんなに切なくなるなんて、悔しい。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ