◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 12  記憶の置き場所 *
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学期末試験の貼り出しを見に来るときですら、すっかり夏休み気分な二人は、そんなことどうでもいいからって、見に行こうとする自分をさんざん邪魔してきた。

「せっかく見に来たのに、ハルヒが一番じゃないなら意味ないじゃん」

「光、ちゃんと見てよ。名前は2番目に書いてあるけど、ちゃんと首席はキープしてるよ」

「でも、一番に名前がないなら、目立たないし意味ないし」

光がうるさく言い続ける。
自分としては、どっちでもいいことで、特待生の在学条件はクリアできてるんだから、そんなにこだわることだろうかと思う。
でも、「鈴川」さんって人の名前に見覚えがある自分と、珍しく光の発言に乗ってこない馨のことが気になる。
結果の貼り出しを黙ってみている馨の横顔を、気づかれないようにそっと確認した。
馨はじっと貼り出しを見ながら、少し頬を赤くしているように見えた。

「馨、どうしたの?あまり良くなかった?」

自分が見る限り、決して悪い成績ではないと思うのに、馨の反応が意外だったので尋ねてみた。

「え?!」

馨が驚いたようにこっちを見て、少し慌てるような表情だったのがもっと意外だった。

「なんでもないよ?ハルヒが一瞬2番だったのかと思ってびっくりしてただけ」

そう言っていつものように舌を出して意地悪そうな顔を見せた。
双子と付き合ううちに、これが普通になっているから、たまに違う表情を見ると、少し心配になってしまっている自分がいる。

「でもさ〜、あの子。鈴川って子、D組だよね?なんか、嫌な感じ」

光が教室に戻ろうとして歩き出しながら言い出した。

「え?どうして?」

自分が尋ねると、

「だって、D組だよ?うちの学校じゃ家柄の次に成績順でクラス分けされるんだよ?それなのに堂々とトップ取っちゃうなんて、D組レベルの試験で俺たちのほうが下なんて、なんか腹が立つよな〜、馨?」

「え、うん。そうだよね。」

馨の様子は、やっぱり、さっきからおかしい。
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