◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 12  記憶の置き場所 *
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「なになに?馨?落ち込んでるの?」

「そんなことないよ光。落ち込んでるっていうか、僕も光と同じこと考えてたから、さすがにびっくりしただけ」

光が気がいてないわけがない馨の様子に、少し気まずい雰囲気になったと思いながら教室へ向かっていると、この空気を壊してくれるには、ちょうどいい人が現れた。

「ハルヒ〜!!!!!」

普段ならめんどくさいこと極まりない人なんだけれど、今はじめて、ありがたい、と思った。
その声の主は大声で廊下を叫びながら、自分に抱き着こうとしているが、その瞬間双子の返り討ちにあっている。ホスト部に入ってから何回も見慣れた光景。

「環先輩、恥ずかしいですから、大声で人の名前を呼びながら走ってくるのやめてもらえませんか。迷惑です」

そういうと、また、めんどくささを増して、

「どうしてだ?お父さんがこんなにもハルヒを想っていることに何も恥ずかしがることはないだろう」

「殿、いい加減、その『お父さん設定』定着させるのやめてよ」

双子がきれいにハモって言う。

「ホスト部は大事な家族じゃないか!そうか、双子たち、お父さんの愛情がつい末娘のハルヒに向いてしまうのが寂しいんだな?」

なぜか満足そうに言う環先輩に、双子はそろって肩をすくめながら、

「はぁ?何言ってんの?僕ら殿の愛情なんか、落ちてても拾わないし〜」
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