◆『どこまでキコエル』長編小説◆
□* 18 光風霽月 *
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到着したのは、公園。
大きな樹の下にあるベンチに座った。
木陰に入ってもそれほど涼しくは無かったけど、直射日光からは逃げることができて、ゆらゆらとしていた彼女の形がはっきりと確認できた。
「冷たいもの買ってくるね」
そう言いながらシェリーは公園を出たところにある店に向かっていった。
しばらくして、彼女は氷がいっぱい入った容器を二つ抱えてきた。
「はい。どうぞ」
そう言って渡されたのは、体に悪そうな色をしたかき氷。
「さっき、この辺に駄菓子屋さんがあったのを思い出してね。これが懐かしくて食べたくなっちゃった。ごめんね、馨君の体調不良を利用しちゃった」
きっと僕に気を使わせまいとして言っている彼女は、とても柔らかく、あの中庭で心配してくれた時と同じ眼差しを僕に向けている。
「馨君は、こういうの、あまり食べない?」
「…。駄菓子屋さんって、生まれて初めてだよ」
ぎこちなく、彼女の言葉に答えた。
「そうなんだ!これブルーハワイっていうシロップがかかったかき氷だけど…。私、いまだに、何味かわからないんだよね」
そう言ってシェリーは嬉しそうに笑う。
溶けてしまう前にって彼女に勧められ、僕たちは冷たい何味かわからない氷の粒を口にした。
その冷たさが喉を通っていくたび、暑さも、体をめぐる熱も少しずつ冷やされていった。
時々、冷たすぎて頭がキーンとする。
しばらくして、シェリーがゆっくりと僕に語り始めた。