◆『どこまでキコエル』長編小説◆
□* 19 嫉妬するイキモノ *
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そんな過去のことを聞いて、それが理由で彼女に更に興味を持つとしたら、それは、ただの同情なのだろうか?いや、自分の性格からして、それはない。
だとしたら、ギャップが起こした一種のバグのようなものだろうか。
彼女が何を思い、考え、何を見て、聞いて、生きているのかまでを考え出している自分に、俺自身が少し戸惑っている。
そんなまとまりきっていない考えを巡らせていると、彼女の競技が始まった。
俺を除くホスト部全員がそれに集中して、嬉々として見守っている。競技中は馬が驚くような声援も禁止されているため、静かに、応援している。
たった数か月で、こんな癖のある連中を惹きつけるだけの魅力は何なのだろう。
「きょーちゃん?」
競技を見ているというよりも、考え事をしているといった俺の姿を見て、ハニー先輩が小声で声を掛けてきた。
「シェリーちゃんだよ?」
「ええ、そのようですね」
「…何だか、きょーちゃんらしくないね?」
この人のこういう観察眼と焚き付け方は、どうやってかわすかのゲームのようで嫌いではない。そしてハニー先輩もそれを知っていて、俺に仕掛けているのだろう。
「俺らしくない、とは?」
「うーんと。自覚中?覚醒中?…それとも、まだ迷宮中?」
ハニー先輩があえて主題を言わない核心を突いてくるような質問を俺にする。
「どういう…」