◆『どこまでキコエル』長編小説◆
□* 21 招かざる客 *
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控室では気丈に心配を掛けまいと振舞って、日帰りで帰るつもりが、引き止められ、彼女の限界が、ここで来てしまったのだろう。
「…まったく…」
抱き起こした彼女の華奢な体の感覚と、熱と疲労で意識が無い彼女を見ていると、やれやれという気持ちにはなったが、いつもこちらが感じていた、彼女の余裕のようなものは、ある種の強がりの上に、均衡を保っているのではないだろうかとも思った。
仕方なく、彼女を抱き上げて部屋に入り、ベッドに運び込んだ。
そのままにしておく訳にもいかず、電話でうちのスタッフに連絡し、手当の依頼と必要なものの用意をさせた。
「あの…鏡夜様。実は鈴川様、夕食も食欲が無かったらしく、何もお召し上がりにならなかったのです…。ただ、皆には黙っていてほしいと言われ…。鏡夜様にご報告が遅れてしまい、こんなことになってしまって、申し訳ございません。」
俺はまた、やれやれとため息をついてから言った。
「わかった。とりあえず、明日、病院の方も手配しておいてくれ」
目の前で、熱にうなされ、少し苦しそうに息をしながら、眠っている彼女を見ていると、本当にただの普通の子にしか見えない。
学校では素性を隠しているのに、過去の自分を知るハルヒのような存在と付き合いながら、でも、そんな相手を含め、周りには自分を見抜かれないためか、弱い部分を隠す彼女は、性分なのか?それとも、俺と同じような理由があるのだろうか。