◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 21 招かざる客 *
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「今日はお疲れだと思うので、よかったら、先にお部屋にご案内しましょうか?」

彼女は微笑んで礼を言った後、他の奴らにも律義に挨拶してから、自分の部屋に行くために俺について歩き出した。

別荘内の案内も兼ねながら、当たり障りのない話をして歩く。
それに合わせて、彼女は短い返事をしている。その声が知っているトーンより弱々しく感じるのは、静まり返って、少し暗い廊下のせいだろうか。
彼女の部屋についたので、ドアの前で挨拶してから、俺も自分の部屋に向かおうと歩き出したとき、「ドサッ」っと背後で音がした。
振り返ると、彼女がドアの前で倒れていた。
一瞬、何があったのか理解できなかったが、彼女に駆け寄り体を起こすと、衣服越しにでも分かるほど体が熱かった。

―こんなに熱があったのに、倒れるまであいつらに付き合うなんて…。ただのお人好しなのか?

無理を押してここに来ているのは分かっていたが、高熱が出ている状態になってまで、ハルヒやホスト部に果たす義理があるのだろうか?と不思議に思った。

「鈴川さん」

少し体を揺すって、彼女に声を掛ける。
反応がない。
もう一度声を掛けようと、さっきより強めに彼女の肩に力を入れた瞬間、

「痛いっ…」

小さい悲鳴が彼女の口から漏れた。
どうやら落馬したとき、彼女は左肩を痛めていたようだ。
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