◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* プロローグ *
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プロローグ
機内の空調は大雑把に調整されていて、まるで自分自身の性格のようだと感じる。

―私は、そんな感じ、の人間。

 アイマスクを少しずらして、目の前のモニターに目をやる。現地時刻 日本 a.m08:30と表示されている。
到着まであと7時間。
イタリアのミラノを出発したのが随分前に感じられるが、実際はまだ5時間程しか経っていない。
ウトウトと眠っていた間に、喉の辺りが乾燥していがらっぽい。
客室乗務員のコールボタンを押し、
しばらくして、沈黙よりも静かに聞こえる声量で、客室乗務員の女性が声を掛けてきた。

「すみませんが、お水を1杯下さい・・・。」

そう告げると、「かしこまりました」と言って笑顔で静かにその場から離れていった。
しばらくして持って来た彼女の水は、
ちょうど良い冷たさで、渇きを潤し気分もすっきりさせてくれた。 

―さすが、大雑把な私とは、違うね。 

軽い自分への冗談に少し気分が良くなってきた。
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