◆『どこまでキコエル』長編小説◆
□* 5 * それなら向き合うだけ
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5 それなら向き合うだけ
鈴川志衣里が転校してきて3週間近くになる。
相変わらず情報は少なかったが、廊下や食堂ですれ違うことがたまにあった。
名前から女性だとは思っていたが、実際に本人を見た第一印象は、
―どこが要注意なんだ?
と思うくらい普通だった。
クラスもD組なので、やはり家柄は無いに等しい。
成績もあまり良い方ではないのだろう。
華奢な体だが容姿がモデルや女優のように目を惹くというわけでもない。
肩のあたりで揺れる髪は陽に透かすと少し茶色く見え、色素が薄いのか白い肌と茶色掛った瞳をしている。
ただ、どこで彼女を見かけても笑顔だった。
その笑顔は少し幼く見えるが、見ていると何だか心の中がイラついた。