◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 6.3 * チカとハニー
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6.3 チカとハニー

 僕の兄は誰も敵わないくらい武術に秀でた人だ。

小さい頃から一緒に鍛錬してきて、いつも僕よりも先を歩いている憧れの人だった。

埴之塚流は主に実戦向きの武術だ。
一族が会する場では「切り結ぶ」家訓のため実戦戦術の手合わせが行われる。
僕はまだ一度も兄に勝ったことはなかった。


進級してしばらくすると、僕のいる中等部空手部と高等部空手部との合同稽古がある。
高等部の武道館に集まって中高関係なく組手練習をして、新しく入った部員の紹介がある。

そんな稽古中、男子部員しかいない道場に突然女の子が入ってきた。
みんなちょっとざわついていたけれど、僕と高等部主将が制して練習を続けさせた。

僕はミーハーな見学者か迷子かと思って女の子を追い出そうと近付いたら、
彼女の後ろから見覚えのある小さな影がひょっこりと飛び出してきた。
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