◆『どこまでキコエル』長編小説◆
□* 13 見守る背中の隣 *
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鈴川の後姿を追いかけることができなかった日から、数日が経過していた。
授業はテスト休みで、鈴川と教室で会うことはなく、鈴川も所属している乗馬部の東関東大会が近いことから、
ほとんど乗馬部の練習とあいまに美術部に顔を出しているらしく、学校で見かけても、忙しそうにしていた。
二人の秘密基地になっていたカフェもここしばらくは使っていなかった。
鈴川がいるわけもないのをわかっていて、なんとなくその日は自然と足がその場所へ向かっていた。
いつも座っている席は空席。
コーヒーを注文して、一人で飲みながら、外を行きかう人たちをぼんやりと見ていた。
信号が何度も変わり、交差点の人たちが何度も交差し、
すっかりあたりも暗くなってきて、そろそろ帰ろうかと考えだしたとき、
後ろから声がした。
「律くん」
まだ数日しかたっていないのに、懐かしい声に聞こえた。
振り返らなくてもわかる、鈴川がそこに立っていた。
鈴川はとても驚いた顔をして俺を見ていたが、
俺は、逆に驚きすぎて夢でも見ているかのような寝起きのような、ぼんやりとした顔をしていた。