◆『どこまでキコエル』長編小説◆ 

□* 4 * かわされた敵意
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D組は一代にして財を築いた所謂『成上がり』や裏社会では知らぬ者がいない家業の家の生徒が多い。
俺の家も家業は関東圏最大のその筋の組織を仕切っている笠野田組で、一応俺はそこの跡取り息子だ。
外見も生まれ付き目つきが悪く、髪も赤毛っぽい色をしていて強面な俺には敢えて近づいてくる奴はいない。
怒っているわけではないのに、口下手でついついぶっきら棒な言い方をしてしまい、
余計に周囲を怖がらせ震え上がらせて、クラスに友達もいなかった。
だからと言って、クラスにまだ馴染んでいない転校生に突け込むような下心は全く無かったし、
第一その転校生、鈴川はどこにでもいるような普通の女子だった
。見た目もちっこい感じで、俺なんかが近付くだけでも怖がるのは想像するまでもなかった。

休み時間や放課後になると、クラスの女子が鈴川に当たり障りのないことを聞いていた。
その姿が地雷を踏まないように慎重に見えるのは、D組事情があるからだろう。
もし、鈴川の家が表立って話せない事情のある家業だったり、物凄い成金だったりした場合、話す側も聞く側もデリケートな話に気まずい雰囲気になるからだ。
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