世界一初恋

□鍵
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「あれ?鍵がない‥。」

横澤は自分の家に着き玄関の鍵を開けようとキーケースを取り出すと部屋の鍵が無くなっている事に気が付いた。
(落としたのか?やべぇな。)
ガサゴソと鞄の中を探してみるが見つからない。
仕方ないかと諦めて携帯を手に取った。

「もしもし」
「おお、政宗か?今どこだ?」
合い鍵を渡している高野に電話をかける。
「今作家の所を出たところだ。今から直帰の予定だが何かあったのか?急ぎなら会社に戻るぞ。」
最近プライベートな事で連絡をしていなかったせいか仕事の電話と思ったのだろう。
「いや、そうじゃないんだ。どうも家の鍵を無くしたみたいでな。」
「鍵無くした?はっ、だせぇ。」
「いや、まぁそうなんだが。それで政宗が持ってる俺の家の鍵を取りに行こうと思ってるんだが。」
「それなら持ってってやるよ。作家の家、お前んちの近くだからな。10分位で着く。待ってろ。」
「すまんな。」
電話を切って暫く待つと高野がやって来た。
「お待たせ。ほら鍵。」
「悪かったな。まぁ上がってコーヒーでも飲んでいけ。ソラ太にも最近会ってなかっただろ?」
鍵を受け取って玄関の扉を開けた。
「だだいま、ソラ太。」
いつもならおかえりと足にすり寄ってくるはずのソラ太が出こない。変だなと思い部屋の電気を付けた。
何か違う。それが室内を見た最初の印象だった。
朝部屋を出た時と何かが違う。違和感を感じて洗面所、寝室と見ていく。
無い。シェーバー、パジャマ、取り込んだままにしていた下着類。
クローゼットを開けるとそこに架かっていたはずのスーツも無い。
「なぁ横澤、ソラ太実家に預けてんのか?」
キャリーバックと猫用トイレも無くなっていた。
泥棒か?と考えた時にあの人の顔が浮かんだ。あの人ならやりかねない。
「あぁ、すまん。最近帰りが遅くなる事が多かったんで実家に預かって貰ってたの忘れてた。ソラ太なら元気だから心配すんな。」
取り敢えず誤魔化しておく。
「ソラ太いないんだったら今日は帰るわ。遠慮しないで前みたいに俺んとこにソラ太預けに来いよ。」
そう言うと高野は帰って行った。
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