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□指を絡めて嘘をつく
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「ソーマ」


彼女に呼ばれ、顔を上げる。
そこには、何かを覚悟した瞳がジッと自分を見詰めていた。


「私は……自分が何なのか知りたいです。父様と母様が関わっている事は、察しがつきました。だから、それを調べようと思ったのですが、音声認識に阻害されて、開く事が出来ませんでした。でも……榊博士の機材なら、可能かもしれません」

「……お前はそれでいいのか?」


自分の親の事、そして自分自身の事を他人に委ねる。
それは、覚悟のいる事だ。
しかも、それを赤の他人である自分に頼もうとしている。
表情を曇らせた彼に、カンナは優しく微笑んだ。


「ソーマだから、お願いするんです。私は、6歳より前の記憶がありません。多分、その時に何かがあったんだと思います。私が、記憶を失いたいと願う程の何かが……」


それは、幼い自分が願った事。
だが、そのせいで別の誰かが傷つく可能性がある以上、知らねばならないのだろう。
それが今、この時だ。


「……元々、このままじゃいけないって思っていたんです。よく分からなかったんですが、何となく胸の奥がざわついて……でも、踏ん切りがつかなかったんです。だって、知ってしまったら……父様を忘れてしまうと思ったんです。あの優しかった父様が、別の顔を見てしまったら、と。それに染まる事が怖くて、ずっと見ないふりをしていました」


きっかけは、多分リンドウの神機を使った時。
因子が安定していたのは、多分精神体だったレンのおかげだとは思う。
だが、それでも自分の回復力には奇妙さを感じていた。
もう少し、身体に異変が残っていても、おかしくはないのでは?と……

震える声でソーマ、と呼びかける。


「……甘えても、いいですか?」


弱弱しい声に、無言で肯首する。
カンナは淡く微笑み、ソーマの傍へ寄り添うと、コテンと彼へ寄りかかる。
その体は、酷く震えていた。
ソッと彼女の肩を抱く。


「昔、シオに言われたんです。カンナのアラガミ、こうたちを食べたいって、言ってるもんな、と……」

「っ!!?」

「私……本当に人間なんですか?本当に父様の子なんですか?考えたら怖くて……私……私……」


続きは、全て嗚咽に消えた。
声を枯らしそうな程、泣き叫ぶ彼女の躰を抱き寄せる。
その体は、前よりも小さく感じて、ソーマは唇を咬む。

この世に神等いないが、それでもこう思う。
もしも、本当に神なんて存在がこの世にいるのであれば、きっと俺はそいつを許さない、と……



















指を絡めてをつく


(お願い、神様)

(今だけでもいいから)

(この言葉を嘘にして下さい)





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