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□世界に殺された夜
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そうこうしている間に、ディアウス・ピターは後退していき、気づけば端まで追いつめていた。
洸とカンナは互いに目配せし合い、その場から飛び退く。
相手はそれを好機だと思ったのだろう、彼らへと飛び掛かろうと飛躍した。
その瞬間、禍々しい光と共に、その四肢が真っ二つに切り裂かれる。


「はっ!!」


短い気合いと共に、その光が霧散し、残るのはアラガミの死体のみ。
全員が警戒する様に神機を構え……それが完全に事切れている事を確認すると、うずうずとコウタが体を震わせた。


「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「煩い」

「ソーマ、俺はコウタが静かだったら、病気だと疑うぞ?」

「お疲れ様でした!!」

「終わったよぉ!!もう疲れた〜〜〜!!」


口々に討伐終了の喜びを分かち合う仲間達。
と、ポンッと背を誰かに押され、カンナが目を丸くする。
振り返った先にいたのは、淡く微笑むソーマ。


「ソーマ……」

「行け。大事な母親なんだろ?」

「はい……」


仲間との喜びもそこそこに、カンナはゆっくりと出入り口にいる月へと歩く。
ずっと死んだと聞かされていた母親。
彼女はアラガミで、自分は人とアラガミとの間に出来た子供。
未だ、その事実には戸惑いがある。
自分は、アラガミなのか、それとも人なのか。
不安げに揺れる瞳が、月を映す。

何を話せばいいのだろう。
どれだけ口を開こうとしても、声は出てこない。

ただ無言で見つめ合う母子。
と、


「言いたいこと、あるんだろ?」

「………」


振り返れば、そこには優しく微笑む仲間の姿。
そうだ、自分は一人じゃない。
そして……アラガミでもない。


「母様」

「……」

「父様を好きになってくれて、ありがとうございました。そして、私を産んで下さり、ありがとうございました。私、凄く幸せなんです。大切な仲間と、大事な人がいてくれます。だから……」


ありがとう……
その言葉に、月は小さく頷き、涙を流す。
そんな母につられてか、カンナの目にも涙が滲む。
泣き出す二人に、洸が苦笑した。


「カンナの泣虫は、母親の遺伝だったんだな」

「それにしても、カンナの母さんって若いよな!!見た目、サクヤさんくらい?」

「もう!!どうしてコウタはそういう事しか言えないんですか!!」

「もぅ、喧嘩しないでアナグラ帰ろうよぉ。ミゥ、頑張って走ったから、もう疲れたぁ」


キャッキャッとじゃれ合うコウタとアリサに、ミゥがグデェと抱きつき、洸はニヤニヤ笑う。
その様子に、涙目のままむぅ!!とカンナが頬を膨らませ、全員を諌める様に騒ぎ出す。

いつもの平和な風景に、ソーマは静かに表情を緩める。
と、ヒョコッと月がソーマを覗き込む。


「あの時の子?」

「……まさか、アンタが彼奴の母親とはな」

「ふふ……成程です。君がソーマ君ですね?」


成程、成程と笑いながら一人納得する月に、ソーマが顔を顰める。
何が成程なのだろう。


「えっと……端末?というものに、名前がありました。頻繁に連絡してましたね?適当に探したら、すぐ出てきました。だから、私はそれに掛けてみました」


つまり、あの連絡はカンナではなく、月だったようだ。
彼女曰く、奴らの隙をついてカンナを奪還したはいいが、このままではカンナの身が危ない。
どうにかして、カンナを助けてくれる人と連絡を取ろうとした結果、カンナが所持していたらしい端末を弄り、助けを呼んだそうだ。

よく思い返せば、あの声はカンナのモノではなく、月の声だ。
僅かではあるが、カンナより声が若干低い。


「……あの時、彼奴を指差したのも」

「きっと、貴方なら助けてくれると思いました。えっと……真実は救われるです!!」



誰に倣ったんだ、そんな言葉。
ふわふわ笑う所は、流石はカンナの母親だろう。
全くの緊張感を与えない、その独特の世界観にはもう脱力するしかない。


「ソーマ君、カンナの事好きですか?」


可愛らしく傾げられた首。
チラリと仲間達を見れば、まだ騒いでいる真っ最中。
こちらには気づいていないのだろう。
それは、好都合だ。


「あぁ」

「あの子を愛して?」

「いる。手放す気はない」

「そうですか。それはよかったです。………ソーマくん、カンナを……私の可愛い娘を守ってあげて下さいね?」


約束です、と差し出された小指。
ソーマは少し戸惑ったが、その指に自分のを絡める。
すると、月は幸せそうに微笑んだ。
誰もが見とれてしまう様な、美しい笑み。
カンナの父親が月光に例えた意味が、よく分かる気がする。


「あれ?おーい、ソーマ!!もう帰ろうぜ!!事後処理は、博士に任せてさぁ!!」


ふと、洸が自身の端末を手にこちらへ手を振っている。
アリサが律儀にコアの回収を済ませている様子も見て取れたから、もう撤収なのだろう。
パタパタと足音を響かせ、カンナが駆け寄ってきた。


「行きましょう、ソーマ!!母様も!!」

「カンナ、私は……」

「父様のお墓参り、きっと母様が来て下されば、父様も喜ばれます!!それに……いっぱい見せたいモノがあるんです!!紹介したい仲間も!!それから………その……大事な人の事も」


最後に差し掛かり、ゴニョゴニョと恥ずかしげに告げる。
暫しキョトンと月は目を丸くしたが、すぐに優しく微笑み頷いた。
すると、パァとカンナが表情を輝かせ、ソーマと月の手を握る。


「行きましょう!!アナグラへ!!」


早く早く、と急かす彼女に、淡い苦笑が漏れる。
アナグラへ戻ったなら、まずは何から話すべきなのだろう。
溜まってしまった思い出は、母親に聞かせたいモノばかり。

ふと、ソーマの視界にキラリと何かが移りこむ。
それは、不吉を告げる鈍い光を放ち、その切っ先が向けられているのは、中央で表情を綻ばせる愛らしい少女。
全身に、寒気が走る。


「カンナ!!」

「ほぇ?」


覆いかぶさる様に、彼女を守る盾となる。
次の瞬間、タァンッと響く銃声。

そして、空間に広がるのは真っ赤な鮮血。

























世界に殺された夜

(君に必要なのは)

(死ぬ覚悟なんかより)

(誰かと生きる覚悟なんだよ)




――――――――――――――

まさかの幕引き←
長かったカンナの記憶編も、残すはあと一話。

補足説明ですが、男はシュバイツです。
なんか、名前出すのが面倒になりまして男に固定(酷)

女の方ですが……彼女はシュバイツの秘書だった人物です。
あと、表現的に6歳で大人の世界へGOみたいな表現となりましたが、それはありません。
致死量ギリギリの薬ぶち込んで、頭クラクラ状態のカンナを脱がした所で、お父様乱入です。

そして最後!!シュバイツの足ですが、それをやったのは月です。
彼から逃げる為、彼の足を噛み千切った様です。



では、ラストまでフルスロットルで参りたいと思います!!

どうぞ、お付き合いを!!





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