GE

□思いやりって大事
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しかし、当の本人達は分かっていないらしい。
頼む。誰か、この二人にTPOの大事さを教えてやってくれ。


「取り敢えず、ソーマ起こすか。カンナも足、辛いだろ?」

「あ、はは……」


同じGEとはいえ、やはり男女差はある。
カンナの手では、それ程長くソーマを支える事は出来ないだろう。

ポンポン、と彼の背を叩く。


「ソーマ、すみませんが起きて下さい」


ソーマ、と呼び掛けてみるが、反応は薄い。
ポンポン、と何度となく背を叩くと、僅かに身じろぐ。
だが、離す気配はなく、逆に嫌だとでも言いたげに、抱き締める力が強まる。


「こら。嫌じゃないです。早くお部屋に帰りましょう?」


ね?と呼び掛けてみるが、嫌だ嫌だの一点張り。
むぅ……とカンナが口を尖らせる。

ソーマ!と少し声を強めに出そうと、口を開く。
その瞬間…………


「そ……ふみゅっ!!?」


柔らかい何かが、口を塞ぐ。


ガシャガシャ、パリンッ、ドンッカンッ、バサバサ、ズガシャーン、バタッ……

けたたましい音。
解説すると、休憩していたらしいタツミ、ブレンダンが飲もうと開けた缶を落とし、豪快に中身をぶちまけ、ターミナルで出撃準備をしていた雨宮夫妻が画面を思いっ切り叩き割り、エントランスの階段を上っていたカレルとシュンが足を踏み外し、書類の話し合いをしていたツバキ、ヒバリ、リッカが軽快に書類をバラ撒き、任務へ出ようとしていたアリサとジーナの手から神機が落ち、一番近くにいたカノンが失神して終了。

うわ、何コレ怖い。

こんな酷い現状だというのに、原因を作った男は未だに夢現。
口を塞がれたままのカンナは、もう顔が真っ赤。
その目には、うっすらと涙が滲む。
流石に、これはマズい。
暫しの口付けから開放し、真っ赤な彼女に一言。


「………煩い」

「う、煩いじゃないです!!兎に角!起きて下さ……」


半泣きで騒ぐカンナに、ソーマはムッと顔をしかめ、その顎に手を当てる。

限りなくマズい……

サァ...と赤から青へと変わるカンナの顔色。
唇が触れ合うまで、後数センチ―――――




「くたばれぇぇえぇぇぇぇ!!!!」

「貫けぇぇえぇぇぇぇ!!!」


ズガンッと何かがソーマの頭部をぶっ飛ばす。
哀れ、不埒な行いをした青年は、愛しの少女から離され、床にダイブ。
ベシャッと嫌な音が、エントランスに響く。


「お〜い、喰われてないかぁ?」

「大丈夫?カンナ!」


駆け寄ってきたのは、ナイスコントロールでソーマの頭部に当てた彼女の保護者洸と、第一部隊が誇る凄腕スナイパーサクヤ。
洸は机に置かれた未開封の缶を、どこぞ球団の豪速球が如く投げ、サクヤはあろう事か旦那様の腕輪を投げつけた。

お隣にいる旦那様の顔が真っ青なのは、心中御察しします。


流石に、これは非道すぎるんじゃないか、とコウタが近くにいた銀髪の美少女後輩を見る。
彼女はまるで予定外のアラガミに遭遇したが如く、危機迫る表情で神機の銃口を床に転がる青年に向けている。


こっちの方が危ない……
いくらソーマが自分達より丈夫だからと言って、神機で攻撃はマズいだろ。


「たく………この馬鹿。眠気に任せて、人の従姉妹にセクハラしてんじゃねぇよ」

「大丈夫?カンナ」


洸が苛々した表情で、床に伏す青年を足蹴にし、サクヤが泣きそうなカンナを優しく抱き締める。

この光景に、コウタは天を仰ぎ、こう思う。

絶対に、夜通し任務にソーマは参加させない、と……










思いやりって大事

(公共の場では)

(TPOが大事です)




――――――――――

あ〜、いいストレス発散となりました(笑)

いや………ソーマが寝ぼけて、カンナを襲っちゃう話が書きたかったんですよ。

絶対、自制効かないだろうなぁって。


補足ですが、ソーマはこの後、全く記憶がないです(笑)



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