GE

□白黒ナイトメア
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彼女が覚悟を決め、神機をケースから出そうとした。


「……アリサ」


ピタッ、とその手が止まる。
視線の先には、淡く笑む彼の姿。


「大丈夫だ、アリサ」


それは、いつもと同じ声音。
何が大丈夫だというのだろう?
彼は……この状況が怖くはないのだろうか?
不安げな彼女に、もう一度だけ大丈夫だ、と洸が微笑む。
彼の縛られた手には、小さな赤い小瓶。

あれは……


「偏食因子ってのは、ある意味便利だよな……」

「……?」


楽しげな彼の言葉に、彼を囲んでいた新型達の表情が若干曇る。
次の瞬間、カラン...と金属が落ちる音と共に、ガンッと鈍い音が響く。
洸の拳が、一番近くにいた新型使いを殴り飛ばしたのだ。

ここで初めて、ガーランドの表情に笑み以外の驚いた表情へと変わる。


「その手錠は、アラガミですら拘束する程の強度を持っているモノですよ!!?それを素手で……」

「残念。素手じゃないんだなぁ、これが」


ニッと浮かべられた笑み。
洸はプラプラと手を振ると、その手に持っていた小さな破片を見せる。
それは、赤い液体を滴らせた、硝子の欠片。

全員が訝しげに見つめる中、アリサにはそれに見覚えがあった。
そう、それはカンナが護身用に、と洸へ持たせた彼女自身の血液だ。


「捕食因子の強い液体を、鎖に染み込ませ、こっちのジャックナイフで無理矢理抉じ開けさせてもらった。殆ど分解されてるから、すんなり壊れたよ」


本当に、従姉妹夫婦には頭が上がらないな、と洸は内心で苦笑した。
まさか、護身用だと渡されたモノがこんな結果で役に立つとは……

振り上げられた神機を避け、隙をついて懐へと間合いを詰める。
怯む相手に手加減する事無く、彼の拳が相手の急所へと叩き込まれる。

グッと息を詰まらせ、地面へと伏せる相手に、洸は小さく笑む。


「神機使いだからって、神機だけ振ってりゃいいってもんじゃねぇよ。資本は体。体術だって立派な修練だぜ?」


覚えとけ、と洸はしたり顔で見下す。
急な任務や難易度の高い任務を請け負う事が多い為、身の熟しや受け身を覚える名目で体術も訓練メニューにはある。
大概のGEはそれよりも神機の熟練度を上げようと躍起になるが、第一部隊の男性陣はそれを許されない。
いや、許さなかったのだ。
元隊長が……


相手が起き上がろうとする前に、すぐさまバレットを打ち込もうとしている新型へと走る。
あれを撃たれれば、面倒な事になる。

必死に手を伸ばし、邪魔しようとする………が


「洸!!!」


アリサの声と共に、ドッと重い銃声。
一瞬の浮遊感と共に走る強い痛みに、洸はその場で転倒した。
足を伝う生暖かい液体から察して、どうやら足を撃たれたらしい。


「私の勝ちですね」


楽しげなガーランドの声と共に、撃ち込まれたバレット。
次の瞬間、ガシャァァァァン!!!とけたたましい音を立てて、ポットが弾け飛ぶ。
そこに映るシルエットは……ノルンでしか見た事のない狼。

おぉ、とガーランドが歓喜を上げた。


「完成した!!この世を喰らい尽くせ、美しき破壊の狼神―――“フェンリル”!!」


禍々しいその姿が雄叫びを上げた。
最悪の事態に、床に転がる洸も、神機を握りしめたまま硬直したアリサも、それを見守る他ない。
フェンリルの双眼が、二人を捕えた。
だが、次の瞬間その体は水の様に溶けていき、気づけば子犬程度の大きさへと変貌していた。

……これがフェンリル?

全員の中で疑問符が浮かぶ。



































「おいで、フェンリル」


凛とした鈴の声音。
フェンリルはヒョコンと顔を上げると、嬉しげに尻尾を振って、声の主へと走っていく。
その先にいたのは……


「お招き頂き、光栄ですガーランド主席?」


ゆったりと笑む蒼間カンナと、彼女に寄り添う様に立つソーマの姿。
だが、ソーマの表情が微かに青褪めている事が、アリサと洸には分かった。
それもその筈だ。

隣に立つ彼女は、普段とは雰囲気がガラリと違う。

普段の花の顔は也を潜め、その顔を覆うは般若の殺意。


「私の従兄弟が随分とお世話になった様で………」

覚悟は出来ていますか?

そう微笑む彼女に、三人は恐怖を覚えた。














ナイトメア


(これが悪夢だというなら)

(目の前の現実の方が)

(よっぽど悪夢じゃないか)




―――――――――――――

鬼カンナ襲来(ヲイッ)

ガーランドさんの悪役らしさが、当社比較で1.5倍となりました。
そして、洸の怪我も1.5倍に←←


さて、体術に関してですが……

やっぱ、必要だと思うんですよね。GEって。
別に人間相手の戦い方とかじゃなくて、受け身とか逃げる為の避け方とか、そういったのを覚える為に。

その為、第一部隊に所属しているメンバーは、きちんと体術を会得している設定です。
筆頭は、やはりカンナでしょうか。

蹴りを中心とした軽い身のこなしが特徴的です。
と、いうか、水無瀬がそういった設定が大好きです←←

女性が綺麗なおみ足で、足蹴にしてるとかそれだけで悶えません!!?(チョイ待て)

イメージは……D灰のリナリーです。


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