GE2
□痛いって心が言うんだ
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だが、それがカンナへと及ぶ事は頂けない。
とはいっても、それは直ぐに霧散していく。
当たり前だ。
彼女は素行にも、性格的にも問題はないのだ。
向けられる悪意は、すぐさま洸とソーマへと戻っていく。
―――しっかし、あの悪魔よく生きてるよな。
―――おい、知ってるか?あいつ、同行者が死にそうになってても、平然と自分の獲物を狙ってくらしいぜ。彼奴に、優しさってのはないのかよ。
―――マジかよ。それより、死神だよ、死神!また、同行者が死傷したってよ
―――彼奴ら、マジでアナグラの病害だよな。折角、同じ部隊なんだから、一緒に死んでくれたら楽なのにな。
―――違いない。
悪魔の次は、病害か、と洸がクツクツ笑う。
どうやら、話している人間は言葉のバラエティーに乏しいらしい。
所詮その程度、そう思い缶を捨てようと立ち上がった時、ふと視線に入ったフードの中身。
それに気づいた時、洸は目を丸くし………気が変わった。
持っていた空缶を握り潰し、声の主達へと思いっきり投げる。
ガンッと鋭い音を立てて、空き缶は彼らの中の一人の頭を強かに打った。
「いってぇ……何すんだよ!?」
「あ〜、すっみませぇん。そんな大口でお話ししてるんで、ゴミ箱かと思いました」
「な、なんだと!!?」
「てかさ……黙ってもらえます?全部丸聞こえだ」
ククッと冷たく笑み、拳を鳴らせば、青褪めていく彼ら。
とはいえ、手を出せば近くにいる従姉妹が怒る事は分かり切っている。
取り敢えず、あぁいった手合いは脅せば大概黙るだろう。
「人の事、悪魔だの病害だの言うのは、あんたらの貧相な頭に免じて、聞かなかった事にしときますんでぇ……」
「い、いや……」
「お、俺達これから任務だから」
そそくさといなくなろうとする彼らに、あぁそうだ、と洸が笑う。
「死神と悪魔って、相性よさそうっすね。気を付けて下さいよ?」
「気を付ける……?」
「その悪魔ってのに喧嘩売ったんですからね。きっと、素敵な事が起きるんじゃないですか?」
じゃ、不吉な幸運を。
そう微笑めば、彼らは短い悲鳴を残していなくなった。
その姿にくだらない、とでも言いたげに鼻を鳴らすと、洸は乱暴にソファーへと座った。
よくわからないが、胸の奥が未だにイライラする。
凶悪と言ってもいいような表情で天井を睨む彼を、ソーマがフードの隙間から盗み見た。
「……なに、イライラしてんだ」
「お前に関係ねぇだろ、青パーカー」
「空気が悪くなる」
「元々、俺とお前が並んでる時点で、空気は壊滅だ」
言葉は平行線。
互いにいう事を失ったのだろう、黙り込んだ先の沈黙。
と、洸が小さく舌打ちした。
「おい、青パーカー」
「……なんだ」
「人間ってのは、面倒だから言わねぇと、なんも分かってくれねぇぞ」
「は?」
いきなり、何を言い出すんだ。
そう言いたげな表情に、なんでもない、と洸が視線を逸らした。
この話は終わり。
人混みの中、パタパタと走ってくる音は従姉妹の足音だろう。
そう思いながら、洸は小さく欠伸を噛み殺した。
痛いって心が言うんだ
(フードの隙間から見えた瞳)
(その瞳が酷く不安そうで)
(悲しげに見えてしまったんだ...)
――――――――――――
荒れていた時代の洸ちゃんは、ソーマを青パーカーと呼んでました(笑)
喧嘩っ早い彼ですが、ちゃんと仲間を思っています。
今回は、そんなツンデレなお話。
自分の悪口には平然としているくせに、喧嘩している仲間が辛そうにしていたから、喧嘩しちゃった★な彼、うんツンデレだね←←
因みに、これが41作目となるのですが……これでいいのだろうか;;
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