GE2

□ハニー・アフタヌーン
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それが厳しさに繋がるのだが、どうにも理解してもらえない事が多い。
未だに、洸の指導に音を上げずについてきたのは、後輩であるミゥ位。


「相手が小型アラガミとはいえ、大きさはお前以上にある!その相手にどう食らい付くか、しっかり頭回せ!!ほら!!脇が甘い!!!」

「っ!!」


注意を逸らしていた為に見えなかった脇からの攻撃に、慌てて少女が装甲を開く。
ガンッと鋭い音を立てて、彼女の立ち位置が少し後方へと持っていかれる。
その姿に洸は少し表情を歪めると、間へと滑り込みダミーアラガミを斬り伏せる。

グァ、と苦悶を訴える様な雄叫びを上げた後、ダミーアラガミは空に溶ける様に消えた。


「どうも、踏ん張りが弱いな。フットワークは軽いんだから、回避を基準とした戦い方を覚えた方がいい」

「それって、逃げ回れ、って事、ですか?」


肩で息をする少女が、不満げな声を上げる。
洸は少しだけ呆れた様な目で少女を見た後、コラ、と軽く少女の頭を叩いた。


「痛っ」

「逃げ回る事が臆病者だって思うなら、その考えは今すぐゴミ箱に捨てて来い。いいか、戦い方ってのは人其々の特性によって異なる。お前、他のGEの戦い方を見てないのか?」

「…………」


沈黙する。
どうやら、そういった考えには至った事がなかったのだろう。
はぁ、と洸は溜息を洩らした。


「センスは悪くない。ちゃんと頭も回ってる。もし、お前に足りない部分があるとすれば、パワー面だろうな。俺もお前の神機に詳しい訳じゃないが、その神機はフットワーク重視なモノだろ?なら、前に突貫する癖を止めろ。ショートよりは攻撃力も申し分ない。何より、一点集中となる突き攻撃は十分な武器になるし、お前は足も速い。逃げ回るとはいったが、十分相手を足で攪乱して、攻撃する事は可能だろうさ」

「…………」

「今後の課題は、体力作り。それから………途中に溜めの仕草をしただろ?あれってのは、その神機特有なのか?」

「あ、はい。チャージグライドって機能です。溜めを行って、相手に高威力の突き攻撃が可能になるそうです」

「成程、な。バスターのチャージクラッシュと似た様な感じか。………お前、チャージが安定してないって、言われないか?」

「っ!?」


目を丸くする彼女に、やっぱりな、と洸は確信する。
時折見せた溜めの姿勢は、どことなく安定しておらず、それまで上手く動けていた事が全く動けず、翻弄されてしまっていた。
多分、彼女の上官が現場に出せないと判断したのは、このチャージグライドが上手く扱えていないから、なのだろう。


「……そう、だな。最初は静止状態のダミーアラガミをセットするから、そいつに向かって、安定してチャージグライドが出来る様にする事だな。大体安定してきたら、動く様に設定し直して、上手くタイミングを覚える事に重点を置くようにする。質問は?」

「あ、あの……一つ、良いですか?」

「ん?なんだ?」

「………どうして、訓練に付き合ってくれるんです?」


ふと、今更の様な質問が彼女から飛び出した。
流石に、この質問は予測しておらず、洸はキョトンと目を丸くした。
確かに、言われてみれば初対面同士だというのに、こうして訓練している事はおかしいだろう。
何より、時刻は既に消灯時間近く。
こんな時間まで付き合う上官は、かなりの物好きだと思ってもいい。

どう答えるかなぁ、と少し困った気分で頭をかく。
と、クスクスと笑い声が響く。
振り返った先にいた笑い声の主を見つけ、洸は拗ねた様に唇を尖らせる。


「カンナ……」

「あ、ごめんね。訓練施設が開いてるから、誰が開けたのかなって調べたら、洸ちゃんだったからビックリしたよ。でも、エリナの特訓?」


これ、夜食だよ、と可愛らしいバスケットを掲げて入ってきたのは、カンナだった。
彼女の登場に少女も驚いた様に、目を丸くした。


「カンナさん……」

「エリナ、頑張り過ぎると明日の訓練に響きますよ?何より、洸ちゃんの訓練メニューはスパルタですから」

「これ位、普通だっての。俺は、お前が組んだメニューの方が、死ぬと思うけどな」


チッと面白くなさそうに舌打ちする洸に、カンナは楽しげに笑う。
と、今更の様に何かを思い出し、少女の方を見た。


「そういや、名前聞いてなかった」

「………洸ちゃん、コウタからの報告はちゃんと確認してますか?」

「確認はしてる。けど、紙やらデータやらで送られても、現状が分かる訳じゃねぇだろ。…………って!コウタ!?じゃあ、此奴がうちの新人?」

「はい。報告にあったと思いますが、第一部隊に配属されています2人の内の一人ですよ」


エリナ、とカンナが促せば、少女は慌てて佇まいを直した。


「エリナ・デア=フォーゲルヴァイデです!よろしくお願いします」

「………洸ちゃんも、記憶にあると思いますよ。ロビーにいた、女の子です」


覚えてますか?と問われ、あ、と洸は思い出す。
自分が赴任してきた時、エントランスで兄を探して泣いていた子供。
身なりからして、かなり裕福な貴族階級なのだろうな、程度にしか認識していなかった小さな女の子。
それが―――――今、目の前で神機使いとして、必死に戦おうとしている少女。
洸は淡く苦笑すると、彼女に倣う様に佇まいを直す。


「歓迎する、エリナ。俺は九条洸。第一部隊所属、独立支援部隊『クレイドル』の隊長を任されてる」

「え………」

「ほぇ〜〜、エリナも知らないで特訓してもらってたの?」


流石に、互いに素性も知らずにここまで必死に特訓してたのか、とカンナが呆れる。
とはいえ、互いに名乗る事もなく訓練をしていた為、名乗る等という事が今更に思えてしまったのだ。


「となると、エリナが八つ当たりした上官ってのは、コウタの事か。確かに、判断は間違いじゃねぇな」

「そ、そんなに、私ってダメですか?」

「いや、そういう意味じゃなくて…………勿体ないって思うぞ?」

「勿体ない……?」


コウタの判断を肯定され、少し落ち込んだ様子のエリナへ、洸が苦笑する。


「さっきも言ったが、エリナは筋はいいんだ。このまま、現場に出ても問題はないのかもしれない」

「なら、どうして」

「これもさっき言ったが、勿体ないんだよお前は。センスも思考も十分だが、パワー、スタミナ、そしてチャージの安定性。これを補うか、克服しておけば、今以上に現場で戦いやすくなるし、不測の事態に陥っても生還率を上げる事に繋がる。部隊を纏める隊長として、脱落者は絶対に出したくない。全員、生きて帰還してこその第一部隊だ」


分かるか?と促すと、エリナは暫し考えた後に頷く。
第一部隊は前線を任された精鋭部隊。
そこで死人が出るという事は、支部内の士気を下げる事にもなる。
自分達が生きて帰還する事が、他の部隊への励みにもなるのだ。

よし、と笑う洸に、カンナはクスクスッと笑った。


「洸ちゃんも、すっかり隊長が板に付いてきたね」

「そりゃ、どっかの誰かさんが隊長なんて面倒事を押し付けてくれたからな。こっちだって、必死になるさ」


肩を竦める彼に、カンナは嬉しげに笑う。
面倒だ面倒だ、というくせは昔と変わらない。
だが、それでも見捨てる事なく面倒を見るのは、彼の長所だ。
さてと、と洸はグッと体を伸ばす。


「カンナの夜食を食ったら、訓練を再開するか。とはいえ、カンナの意見ももっともだ。夜食食って、後一時間やったら今日は解散。GEは体も資本だからな。ちゃんと休めよ?」

「――――はい!」


元気よく返事をしたエリナへ、洸は愉快そうに笑った。















































ハニー・アフタヌーン








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洸ちゃんとエリナの話。
ほぼ全力で極東中を回ってる洸が、エリナと会うのって絶対に天文学的数字な確率だろうなぁとか妄想してみた!


そして、アリサ馬鹿な洸ちゃんなら、きっと新人の名前は覚えてるけど顔は知らないとかっていうアフォなミスするんだろうなぁとか思った!!


てか、エリナまじ可愛い





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