GE

□思いやりって大事
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カンナは一人、そわそわと出撃ゲートを見詰めていた。
昨日の夕方、急遽舞い込んできた討伐任務。
それへ参加していったメンバーが、夜を越しても、未だに帰ってこないのだ。
早朝にヒバリへ確認したが、救援信号は出ていないらしい。
つまり、想像以上の長丁場になってしまったという事だろう。
だが、それでも心配なものは心配なのだ。


「あ、あの……カンナさん」

「ほぇ?……あ、カノン」


ずぅと出撃ゲートを見詰めたままの彼女を、気遣わしげにカノンが声をかけた。
昨日から、ずっとエントランスの出撃ゲートが見える位置にあるソファーに座り、彼らの帰りを待っているのだ。
そろそろ、精神的にもきつくなっている筈だ。
微笑む表情も、僅かではあるが青白い気がする。


「こ、洸さん達なら大丈夫ですよ!!皆さん、とても強いですから!!」

「……すみません。気を遣わせてしまって」

「い、いいえ!!いつも助けて頂いてますから」


慰めの言葉も、今は彼女の気分を張らせる程の効果はないだろう。
どうしたらいい。
アワアワと困惑するカノンに、カンナが苦笑する。
確かに、こんな表情の自分がエントランスにいては、他のGEへの悪影響となってしまうだろう。
取り敢えず、一旦部屋に戻ろうか。

そう思い、ソファーから腰を上げる。
と、ガシャンッと扉が開く音。

出撃ゲートが開いた様だ。
顔を上げれば、慣れ親しんだ面々の姿。
パァ...と表情を綻ばせる。


「おか……」


お帰りなさい……

そう言おうとしたが、それは覆い被さってきた黒い影によって封じられてしまった。
何かが、自分にのしかかっている。
キョトンと目を丸くし、取り敢えず顔を出さねば窒息死してしまいそうだった為、その黒い影の中でもがき、プハッと顔を出す。
と……


「そ、ソーマ……?」


覆い被さってきた黒い影は、任務に行っていたソーマ。
つまり、現在の自分はソーマに抱きつかれている事になる。
しかも、こんな人通りの多いエントランスで、だ。

隣で、アワアワと信じられないモノを見た、とでも言いたげのカノンの姿。
そして、彼の肩越しに見えたのは、一緒に任務に参加していた洸とコウタ。
洸はあちゃ〜、と苦笑し、コウタに至っては開いた口が塞がらない様だ。
はて、自分は何か変なことをしているのだろうか?


「お帰りなさい、洸ちゃん。コウタもお疲れ様。今回は、手こずったんですか?」

「あぁ。最後の一匹と夜通し鬼ごっこ。そうかと思えば、ザイゴートご一行とご対面でさ。悪いな、心配かけて」

「いえいえ。全員、怪我はありませんか?」

「怪我はない……が、眠くて死にそう。報告書は寝た後でもいいか?」

「はい。ツバキ教官には、私からお願いしておきます」

「了解。じゃ、よろしく」

「ちょ、ちょっと待ったぁ!!」


ナチュラルに会話を終了させた従兄妹達に、コウタが待ったを駆ける。
すると、不思議そうに二人が首を傾げた。


「どうした、コウタ」

「す、すげぇナチュラルに会話してるけど、さ……ソーマ、抱きついたままだよね?」

「はい。よっぽど眠かったんですね。早く寝かせてあげませんと」

「いやいやいや!!そうじゃなくてさ!!」


そういう問題じゃないだろう。
あの、あ、の!!ソーマがカンナに抱きついているのである。
それも、こんな人通りのあるエントランスで。
もう、その状況だけで、このエントランスにいる人間は、石化してしまっているじゃないか。
え?お前らそんな関係なの?
いつ?いつ告白?
それ以前に、なに独身が多いこんな場所でいちゃついてんだよお前ら。

色んな意味で、思考はフルスロットルだ。




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