短編
□安眠 〜わたしのもの〜
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カノンは学校の廊下を歩いていた。目的は竜宮島高校生徒会室。竜宮島には学校は一つしかなく、その一校で小学校から高校まで、存在する。それなりには広いのだが、学年やクラスはごく少なく、在って2クラスほどしかない。
そんな学校でカノンは目的の部屋を見つけると、少し強めにドアを開けた。
……あけた時にドアが軋んだのは内緒だ。
「やはりとは思ったが、やはり此処にいたか。レイ」
生徒会室の机にぐでっとなっている人物を見るな否や、カノンは苛立ったような声でそう言った。が、その人物……レイはどうやら寝ているようで、カノンの言葉に見向きもせず、ぐでっと机に伏しながら、窓のほうを向いていた。
カノンはまたか、と思いつつ、部屋の窓を開ける。レイは生徒会に所属しているのだが、基本的に仕事はサボって、この生徒会室で、寝ているのである。基本的には生徒会の仕事は、学校から海沿いに出たところにある喫茶「楽園」で行うのでレイはこの生徒会室で寝ているのであった。
ふと、開けた窓から風が吹いてきた。レイの淡い金色の髪が風に揺れ、レイが頭の位置をカノンに向ける。カノンはレイの寝顔を見て、少し嬉しそうに微笑んだ。そして、レイの頭を優しく撫でる。レイは少し声をもらしたが、起きる気配は無かった。
「いつもなら、私の足音を聞いて、すぐに隠れるくせに。今日は疲れているのかのか?」
レイは元軍人と言うのもあってか、人の気配には敏感で、普通足音を聞けば起きるし、最低でも、触られると飛び起きるのが普通だった。だが、今はカノンが頭を撫でているのにもかかわらず、全く起きる気配は無かった。
「フフッ、今日は良いものが見れたかもしれないな」
本当は怒ってやるはずだったのにどうしても嬉しく思ってしまう自分がいる。誰も知らないレイを私だけが知っているんだという、そんなちょっとした優越感がカノンの中に生まれた。こいつのこんな無防備な顔は私以外に知って欲しくはない。誰にも教えたくない。
そんなことを思いながら、私は体を少し寄せてレイの左手に自分の右手を重ねた。こいつの手は思ったより大きくてやっぱり男なんだな、って思う。普段のレイはどこか中性的な感じがするから私はこういう時改めて実感する。
レイにこのことを言ったら、暫く落ち込んでたな。
重ねていた手を動かしてレイの手を握るとそれだけで自分の心臓が早鐘を打つのがわかる。