短編
□もしも 〜さいごまで〜
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最後の時。一緒にいられるのなら、それは―――
竜宮島。大量のフェストゥムに囲まれた中でその漆黒の巨体と共に、戦い続ける者がいた。
「ははははははは!!」
レイ・ベルリオーズは高らかに笑いながら、向かってくる金色を、一掃していく。もはや、彼はもはや、戦う理由などとっくに消え失せているであろうに、一人戦っている。
時はさかのぼり――――
「フェストゥム!?」
「ああ、かなりの大群で押し寄せているようだ」
ブリーフィングルームではファフナーのパイロットたちが、敵の襲来を聞き、やや混乱状態にあった。
「そんな、もう動けるのはレイとカノン、それと俺だけだっていうのに」
一騎はまるで絶望に打ちひしがれたような声を上げた。無理も無い、度重なる戦いで、パイロットも、ファフナーにも限界が訪れ、パイロットのうち、近藤剣司。要咲良。が同化現象で「いなくなり」、遠見真矢も昏睡状態にある。現在戦闘可能なパイロットも、レイは左半身麻痺。カノンは右目視力喪失。一騎は両目視力喪失及び右半身麻痺と、まさに絶望的状態。
だが、引くわけには行かない。此処で彼らが引く、それはすなわち島の滅亡を意味するのだから。
「作戦は、至極単純。こちらの戦力を極力維持したまま、敵を殲滅すること。」
「それしか方法はありませんね。遂行難易度は度外視するとして、やるしかありません」
「くそうっ……」
彼等は、巨人へと乗り込む。絶望の先に、未来があると信じたいから……
今まで、そうやって乗り越えてきたのだから
――――
背後で、爆発音が聞こえた。
「一騎!?応答を、マークザイン!!」
レイはマークザインへ呼びかけるが、上半身が吹き飛び、フェンリルすらも消滅しているこの様では、搭乗者の命運は火を見るよりも明らかだ。さらに、レイは竜宮島からの通信を受け、驚愕に目を剥いた。
「え、待ってくださいっっ。CDC!!CDC!?」
竜宮島のLボートが切り離された。まるでこの島の最後を告げるかのように。
「レイ、どうした!?」
かろうじて生き残ったカノンはレイに尋ねるが、レイは島を指しただけで何も言おうとはしない。
―――直後、島が在った場所が、閃光に包まれた。フェンリルの光は、そこにいたフェストゥムを道連れに、巨大な閃光と共に……
「そんなっ……竜宮島が……母さあああん!!」
カノンは何も聞こえない通信機越しに、何度も母を呼ぶが、何も聞こえない。聞こえるのはただ延々と響く、向き質なノイズのみ―――